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よしなしごとども 書きつくるなり
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山田詠美(幻冬舎)

 片手が無い女の子の話「天国の右の手」。
 さすが山田詠美。主人公は障害者だが、障害者の心の中をこんなふうに書いた小説を読んだことがない。全然お涙頂戴ではない、それどころか彼女が羨ましくさえ思えてくる。両手があったって、それで一体何を掴んでるっていうの? 私は片手だけど、こんなに素敵なものを掴んでるんだよって言われているみたい。
 それから「血止め草式」。人一倍「イイ女」でいたいのに、隣に住む男と不倫するに及んで次第にB級女に成り下がっていく主人公。彼女のジレンマが過不足なく伝わってくる。
75点
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山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第五巻。戦争をテーマにした、十一の作品が収められている。
 一番の長編「太陽黒点」を紹介しよう。
 アルバイトをしながら大学に通う明。同じアパートに住む容子とは恋人同士だった。彼らは慎ましく、穏やかな関係を育んでいた。だが大企業の社長令嬢である恵美子という女性が現れ、ふたりは次第に彼女に翻弄されてゆく。
 いくら努力しても、生まれながらにして別世界に住む恵美子に敵わないという明の絶望に、深く考えさせられた。そういうふうに不平等なのは世の常である。安易に恵美子に取り入ろうとする彼に、容子ともども私も悲しくなってしまった。
 そして、事件の鍵を握る人物による、ラストの独白。殺人の動機を知るに及んで、その無意味さ、理不尽さには息をのんだ。
75点
山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第三巻。十三の作品が収められている。
 タイトルにもなっている「夜よりほかに聴くものもなし」を紹介しよう。八坂という一人の老刑事が事件の謎を解く、連作短編集。
 彼は、物語の最後に必ず「それでも……おれは君に、手錠をかけなければならん」と言う。唾棄すべき人間が犯人だった場合はもちろんのこと、犯人がどんなに同情に値しようとも、老刑事は職務を全うしようとする。
 彼が事件の全容を掴んで、身を震わせるようにしてこのセリフをつぶやくので、読んでるほうも充分に感情移入できる。
 他に「鬼さんこちら」という短編も、まるでミステリーのお手本たる、切れ味鋭い作品である。
90点
山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第十巻。
 二十七の作品が収められているその中で、どうしたってこれを紹介しなければなるまい。
 「うんこ殺人」。
 事故死して、地獄へと来てしまった鏡氏。
 彼の首は胴体の上にはなく、片手に自分の首をぶら下げているというからグロである。
 そして共に地獄に堕ちた妻と、地獄の裁判所で罵りあう。
 その妻はと言えば、首が百八十度回転して、顔の下が背中になっている。加えて内臓が飛び出している娘。
 三人がなぜかうんこまみれなのである。その訳は……。
 何てばかばかしいのだろう。嬉しくなってしまう。痛快無比である。
 その他、近未来を描いたSF色の濃い作品もまた楽しめた。
85点
山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第二巻。
 七つの短編と長編が一つ収められている。いずれも探偵・荊木歓喜が謎解きをする。
 私が気に入ったのは「女狩」。犯人の動機、あるいは心情と言ってもいいと思うが、それは分かる人にしか分からないものである。
 ネタばれになるので詳細は書けないが……とりあえず私は「分かる」クチである。

 長編の「十三角関係」も手が込んでいて面白い。
 女郎屋の女主人が惨殺され、多数の容疑者が浮かび上がる。
 誰からも慕われ、太陽のように明るかった女主人。しかし、どんな親切もアダになることがある。
 犯人に繋がるヒントをひとつ。病気も怪我も多少は本人にも責任があるが、発狂するほどの悲嘆だけは完全に他人のせいである、という意味の文章が心に突き刺さった。
85点
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