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よしなしごとども 書きつくるなり
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三島由紀夫(新潮社)

 「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」という言葉で有名な「葉隠」。その書に対する、三島なりの解釈を表した一冊。

 周知の事実であるが、三島は割腹自殺を遂げた。そのことを思うに付け、彼が葉隠に心酔したわけが透けて見えるようである。常に死を意識し、それを身近なものとして捉えているのが葉隠なのである。
 また、次のような一文もある。「上役には煙たがられるような存在であれ」。
 それを受けて三島は、人に煙たがられることが避けられないのは『人に軽蔑されるくらいなら、死んだほうがましだ』という、信念ゆえである、とも明言している。そのような解釈は、彼の孤独感、厭世観から来ているようにも感じられた。

 一冊の書物に自らの行動規範を置く危険性を、三島が身を持って示してくれたかのような作品であった。
50点
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三島由紀夫(新潮社)

 世にも美しい妻をめとった男は、実は極端なエゴイストだった。妻が顔にひどい火傷を負った途端、関心ゼロになってしまう。その後、彼は興味の対象を娘へと移し、今度は娘に自分の価値観を押し付けていく。

 たとえば娘と食事をするシーン。食前酒のオーダーは、洋服の色と同じ色のカクテルを頼みなさい、と彼は進言する。私だったら余計なお世話、である。
 やがて娘は条件の揃った美男子と婚約して、父親である彼も御満悦だったのだが……。ラスト近く、妻が見事に復讐を遂げるところでは胸のすく思いがした。
75点
道尾秀介(文藝春秋社)

 大学生・秋内の目の前で、知り合いの少年がトラックにはねられる。少年が連れていた犬が、暴走して道路に飛び出したせいで。なぜ犬は暴走したのか?

 読了後、嫌な予感がしてこの作品に関する書評をいくつか読んだ。褒めているものが多かった。けれど正直に書こう、私にはつまらなかった。
 まず思ったのは、秋内が過剰にうぶだということ。微笑ましいを通り越してイライラした。
 ストーリーもいただけない。犬の暴走が少年の命を奪う、その設定がまず受け容れがたかった。しかもその暴走の原因を作った人物は、事実を隠蔽するために、ある男性を殺そうと企む。男性が、その事実に気付く かもしれないから、 という理由から。かもって。その軽さに唖然とした。
60点
道尾秀介(東京創元社)

 母親を癌で亡くした凰介は、父親と二人暮らしとなる。その直後、幼なじみの亜紀の母親が自殺を遂げ、亜紀も交通事故に遭う。次々に起きる事件に、小学五年生の凰介は混乱するが……。

 読みやすくて分かりやすくてどんどん読めてしまったが、読了したとき引っ掛かる点がいくつかあった。
 凰介がときどき見る幻覚のようなものが描かれていたが、これは必要なエピソードだろうか。記憶とは曖昧なものだという意味で入れられた話であろうが、あまりにも思わせぶりというか、大げさ過ぎる気がした。
 終盤の屋上での事件にも疑問が残った。その夜、偶然にも「そこに居合わせた」? 偶然にもほどがあるだろう。
70点
水上勉(新潮社)

 幼い頃から禅寺で精進料理を作っていた筆者が、旬の素材を活かした料理を紹介するエッセイ。
 ふきのとう、みょうが、うど、高野豆腐……こういう食材は、どう料理されようが私は好きではない。しかしながら作者の書き方は、材料を慈しむ心にあふれ、とてもおいしそうに感じられる。
 特に「松茸」の部分では、生つばが出た。よく焼いたのを手で裂いて、柚子、だいだいをふりかけて……簡素にして贅沢な食べ方である。
70点
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