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ボディ・アンド・ソウル

古川日出男(河出書房新社)

 作家フルカワヒデオの魂の彷徨を描いた、支離滅裂な一冊。
 何だかよく分からなかった。人に勧められる作品でないことは確かだが、駄作として切って捨てるのも違う気が……あ、ぴったりの言葉があった、マニアック、だ。この独特の世界は、ハマれば楽しむことが出来ると思う。
 ハマらなかった私でも、面白いと思えるところはあった。ヤフーBBの勧誘話とか、ヴィトンの直営店の話とか、南東北ってどこだよと憤るシーンとか。この例だけでも、この作品がどんなに風変わりか感じ取っていただけることと思う。

 物語の最後の一文には句点がない。そこで最初の一文に戻ると……なるほど。こんな仕掛けもマニア向けかもしれない。
40点
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もの食う人びと

辺見庸(角川書店)

 私「今地球上に人間ってどれくらいいるの?10億くらい?」
 ダンナ「はあぁ?中国だけでも10億以上いるよ。全部で60億くらいじゃない」
 そんなにいる中で、毎日充分な食事が摂れているのは……八割くらい? もっと少ない? 切なくなってくる。

 筆者は世界中を飛び回って人々がいかに「食べているか」を見て、体験してきた。
 残飯を売る人、食べる人、チェルノブイリに暮らし、そこで採れた作物を食べる人、刑務所の食事……壮絶な世界である。
 そんな悲惨な話のなかで私がほっとしたのは「観覧車での食事」。ゆっくりとしずしずと廻り続ける観覧車のなかで食事する……観覧車酔いするらしい。ちょっとやってみたい。
70点

生きる歓び

保坂和志(新潮社)

 墓地で拾った子猫が、病気を乗り越えて生きる姿を描いた「生きる歓び」、小説家・田中小実昌との交流を描いた「小実昌さんのこと」の二編が収められている。

 後者の作品に、興味深い表現があった。「ダラダラ書く作家」という一節だ。その例として小島信夫、田中小実昌、後藤明生の名前が挙がっていた。昨日の続きの今日、といった日常を、さらりと書く作家というのが確かにいる。
 そんな世界は退屈なことが多いのだが、読むほうもダラダラと気ままに読むと、案外楽しんで読むことができることもある。この二編も、まさにそんな作品であった。
60点

未来いそっぷ

星新一(新潮社)

 ショート・ショート集。
 彼の作品は、高校生の頃夢中になって読んだ。斬新で、作品にこめられた皮肉、ユーモアや構成の妙にいちいち興奮していた。
 この作品集は「未来」がひとつのテーマとなっており、いろいろな未来の機械が登場する。
 そのなかには今や現実のものとなっているものもあったりして、作者の先見の明に驚きを禁じ得なかった。
 気に入った作品は「ある夜の物語」。クリスマスの夜に、ある男の望みをかなえてあげようとするサンタクロース。その男が望んだものとは……。心がほっとする作品である。
65点

旅をする木

星野道夫(文藝春秋社)

 1978年から17年間、アラスカで暮らした筆者のエッセイ。一つ一つの話が短くて、非常に読みやすかった。
 テーマはいろいろだが、共通しているのは「念ずれば通ず」ということだろうか。英語の点数が足りなくても、アラスカ大学に入れた。見ることが難しいというカリブーの出産も見た。日本の子どもたちがやってきて一週間、その最終日にオーロラは出現した。嘘みたいだが。
 また、アラスカの厳しい自然に翻弄され、絶望する日もあったであろうに、筆者は愚痴をこぼさない。大自然に対しては謙虚であり続ける。その真摯な態度に打たれた。

 私もいつかアラスカに行ってみたい……日本のそれよりも小さくて可憐だというワスレナグサを見てみたい。
75点

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