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本当はちがうんだ日記

穂村弘(集英社)

 またまた穂村さんがやってくれました。面白すぎです。

 たとえば「みえないスタンプ」という話。
 どこかに見えないスタンプ帳が存在し、人間の言動ひとつひとつにスタンプが押されていく。良いことは「正」、悪いことは「負」のスタンプ。それが一定個数たまると、景品がもらえる。ダイエットしていて、急に体重が落ちるのは「正」のスタンプがたまったからでは?
 自分が性欲満々のキスばかりしていたら「負」のスタンプがたまったらしく……オチは本編でどうぞ。
 分かる。そして笑える。

 あるいは「クリスマス・ラテ」という話。
 将来、何になろう。何をしよう。
 と考えてふっと思い出す。
 あ、もう、今が将来なんじゃん。
 俺、四十一歳だし。総務課長になっているんだし。
 
……。
 穂村さん、ノストラダムスの予言もはずれ、2000年問題も無事通過できて、本当に良かったですね。ふははは。
95点
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世界音痴

穂村弘(小学館)

 エッセイ集。
  『にょっ記』とは少し趣が違うエッセイ。というか、こちらのほうが早く書かれたものなので、穂村氏の若気の至りというか、ダークサイド全開、といった印象。
 もう「私」しか熱中するものがない、とか。
 「自然さ」を奪われた者は、世界の中に入れない、とか。
 穂村氏の意外な暗さに面食らった。

 ひとつ「あぁ分かる!」と思った話を紹介しよう。
 映画が始まると、どんなに面白い映画でも「早く終われ」と思う、という話。これから自分がどきどきしたり感動したりするという、その期待と緊張が苦しい、と彼は書いている。
 私も映画を観始めると、何かもやもやしたものを感じていた。具体的な言葉にすると、そういうことだったのかもしれない。
80点

にょっ記

穂村弘(文藝春秋社)

 ほむらさんの日記。4月1日から3月31日まで。
 川上弘美氏以上のエッセイを書く人はこの世に存在しないに違いない、と密かに思っていたのだが、こんな凄腕が現れるとは。
 そのくらい、この日記は面白かった。

 ほむらさんの普通な日々も愉快なのだが、彼の妄想もかなり愉快だ。
 大富豪になったら、ビスコのクリーム部分だけ食べるのだそうだ。それをまたスーパーの棚に戻す。庶民はクリーム無しのビスコを当たり前だと思って一生を終える。くだらない、且つ素晴らしい想像。
 またある日。うたた寝から、昔はむにゃっと目覚めていたけど、最近んごっと目が覚める、と。さてはいびきだな、と思ったという。
 これほど適切な「いびき」の表現がいまだかつてあっただろうか。
 イラストもいい。ひと癖ありそうな動物の絵(ヤブイヌという動物らしい)が、このへんてこ日記にぴったりだ。
100点

雪沼とその周辺

堀江敏幸(新潮社)

 連作短編集。
 雪沼という小さな街で暮らす人々の日常を、丁寧に描いている。
 「送り火」という作品を紹介しよう。
 書道教室を営む陽平さんと絹代さん夫妻。ふたりには由(ゆい)という息子がいたが、小学生のときに事故で亡くなってしまう。その13回忌のとき、絹代さんは息子に関するある話を耳にし……。

 子供の命を救ったかもしれぬ小さな灯り。絹代さんが蒐集するランプの灯り。それらがシンクロして、悲しい陰影を形づくる。
 いずれの短編も味わい深く、文章には透明感がある。それゆえ退屈な部分もあり、「純文学」好きにウケそうな雰囲気ではある。
70点

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