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よしなしごとども 書きつくるなり
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重松清(理論社)

 「10代の悩み相談室」に寄せられた質問、相談に答えたのが本書。
 10代のころ、そういえば自分もこんなことで悩んでいたかもしれない。親に日記を読まれたら? がんばって勉強したら、本当にしあわせになれる? などなど。

 特に昔を思い出したのは
 「仲の良い子と別なクラスになってさびしい。今のクラスでは、二人組みになるように先生から言われると、自分が余ってしまう」
 という相談。
 重松氏の答えは
 「自分も中学の頃、一人になることを恐れていたから、気持ちはよく分かる。でも『たまたま』一人になったのなら、その状態を受け容れて、一人でも大丈夫だという姿勢でいよう」。
 分かりやすくて良い答えだと思った。

 全体的に、重松氏の答えはなかなか説得力があるものが多かった。難を言えば少々話が長い。
60点
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重松清(新潮社)

 視点は違えど、すべて「いじめ」がテーマの短編集。
 表題作の「ナイフ」。息子がいじめられていることに気付き、苦悩する父親。彼が回想するシーンで、新生児室にいる息子に「生きることに絶望するような悲しみに出会いませんように」と願う部分がある。皮肉なものである。

 この作品を読みながら、ずっと考えていた。自分の子供がいじめにあったら、ということを。でも想像することさえ厭だった。学校なんか行かなくていい! って言うと思う。なぜならこの作品に出てくるようないじめっ子はタチ悪すぎで、根底から病んでいるから。
 気に入らなかったのは「エビスくん」。悪ガキがほとけ心を起こすあたりが嘘くさかった。現実はこうはいかないだろう。
70点
重松清(幻冬舎)

 文体が村上春樹にそっくり。これが彼の作品だと言われても、全然疑わないと思う。主人公は十八回くらい(数えないでね、冗談だから)ため息をついてるし、登場人物は変なあだ名で呼ばれてるし、濡れ場はあくまであっさりと、だし。

 内容は、次の通り。妻に先立たれた翻訳家である主人公は、妻の妹と同居することになる。その義妹は冬眠するという奇病持ちで、しかも妊娠していた……。
 話自体はおもしろかったが、村上氏の作品との差異を見つけようとしてしまって、どうにも感情移入できなかった。解説によると、この作品だけ毛色が違うそうなので、この作者の他の作品を読まずに結論を出すのは早いのかもしれない。
60点
雫井脩介(双葉社)

 「日本クライム文学賞」を取った待居。その受賞作は映画化されることとなった。監督は鬼才と称される、脚本家・小野川。彼は独自の感性で、一時期有名になった自殺サイトの話を映画に盛り込もうとする。待居はそんな彼を不快に思うが……。

 誰が主人公というわけでもなく話が進んでいくので、全体的に冗長な感じを受けた。特に小野川はアクが強くて強引な性格なので、彼が出てくると余計話がくどくなる。
 と、前・中盤はいまいちだったが、終盤の畳み掛けるような展開はスリリングで良かった。雫井氏の本領は終盤で発揮される……彼の作品を三冊読んで確信した。
70点
雫井脩介(双葉社)

 幼い男の子を狙った連続殺人事件が起きる。警察の捜査は行き詰まり、ついにテレビ局を巻き込んだ、史上初の劇場型捜査が動き出す。

 警察小説というと、登場人物が把握しづらいのが常だが、これは違う。利己的な植草。人情家の津田。実直で頼れる本田。それぞれが確固たるキャラクターを持っているので、自然と頭に入ってくる。
 ストーリーも実に分かりやすく、大きなどんでん返しなどは無いものの、すいすい読めて気持ちが良かった。
 スピード感あふれる終盤の展開もすばらしく、まさにページを繰る手ももどかしいほどだった。

 難点を挙げるならば、話し言葉の頭に、よく「えー、」と付いているのが引っ掛かった。リアルさを出すためかもしれないが、鬱陶しいだけである。
95点
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