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よしなしごとども 書きつくるなり
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伊坂幸太郎(新潮社)

 強盗をし損ねた伊藤は、気付くと見知らぬ島に連れてこられていた。そこは牡鹿半島の南に位置する島だったが、長らく外界とは隔絶された場所だった。
 住人は奇妙な人ばかり……反対のことしか言わない画家、太りすぎで動けない女性、しゃべるカカシ。そのカカシがばらばらの姿で発見され、島の秩序は乱れはじめる。
 
カカシがしゃべるはずがない、というもっともな考えを、伊藤も抱く。他にも、次々に登場しては好き勝手に振舞う島の住人を、いったんは疑問の目で見る。その彼の行動が「本当らしさ」を醸し出している。
 しかしながら、ストーリーに盛り上がりが乏しく、オチも弱い気がして、全体的に印象の薄い作品だった。

 ここからは個人的な意見だが、「リョコウバト」の話は稲見一良氏の「ダック・コール」の中に、「支倉常長」の話は遠藤周作氏の「侍」の中にあり、そのような作品どうしの繋がりが興味深かった。
65点
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伊坂幸太郎(角川書店)

 怪しげな会社に所属する「鈴木」は、ゆきがかり上、押し屋を追うはめになる。路上で人を押して車に轢かせる押し屋。そう目されたのは「槿(あさがお)」という謎の男。
 平行して進むのは、人を自殺させるのが仕事の「鯨」と殺し屋「蝉」の話。

 鯨と蝉の描写に惹きつけられた。対峙する相手の生気を奪う、まるで死神のような鯨。悪の化身のような蝉。二人の差しの勝負には息を呑む迫力があった。
 対する鈴木の凡庸さは、ストーリーの小休止、ノーマルな人間のサンプル、といったところだろうか。彼については妻との思い出話が少々うっとうしかった。
 男性の登場人物と比べると、女性たちは類型的に過ぎるような気がした。特に槿の妻・すみれは男性小説家の描く(夢見る?)可愛い妻そのものだった。
85点
伊坂幸太郎(角川書店)

 死ぬ予定の人間を七日間調査して「可」「見送り」のいずれかの判定を下す死神、千葉。彼が調査した六人についての連作短編集。

 『旅路を死神』が良かった。
 殺人犯である森岡は、千葉の車に乗り込んできて、北へ向かうことを指示する。森岡が告げた行き先は十和田湖。道中、千葉は森岡の胸中を探るが……。
 どこまでも淡々としている千葉、幼稚で浅はかな森岡、そのやり取りが絶妙である。
 次第に明らかになる森岡の過去も、ミステリーの味付けがなされていて、かなり引き込まれた。
 一歩間違えばキワモノになってしまいそうな「死神」というモチーフを、筆者はやすやすとこんなに心躍る、しゃれた小説に仕立て上げてしまった。その手腕に感服した。
95点
伊坂幸太郎(角川書店)

 泉水と春は兄弟で、弟の春は母親が強姦されたときに身ごもった子であった。二人が大人になったとき、ある事件が起きる。壁などにスプレーで落書きする、悪質ないたずら。それに引き続いて起きる連続放火。兄の泉水は事件の謎を解こうとするが……。

 登場人物がみんな変わっていて、それがとても心地良い。
 春は突拍子がなくて、その実すべて計算していて巧妙で。ガンで入院中の父は、子供みたいに無邪気かと思えば、圧倒的な存在感で兄弟を戒めたりもする。
 ひとり、泉水だけが常識的な雰囲気を持っているが、彼もまた前述の二人にかかると、軽々と常識を飛び越えた行動に出たりする。
 変わっていることを理解し、信頼しあう三人のゆるぎない関係が、ひどく羨ましかった。

 途中、こんな挿話がある。とある寺の看板に「まさか、楽するために生まれてきたんじゃあるまいな」と書かれていた、と。
 いくつもの悲しみを乗り越えてきた春は、この一文を心から肯定する。彼の悲痛な想いが爆発する終盤で、私はこの部分を思い出し、今後彼の人生が少しは楽になることを祈った。
95点
伊坂幸太郎(新潮社)

 首相が凱旋パレード中に暗殺される。警察が犯人として発表したのは青柳という男。だが彼は真犯人ではなかった。警察の常軌を逸した追跡を、彼はかわすことができるのか?

 伊坂氏が得意とする場面が次々と変わっていく手法が、ストーリーに絶妙な疾走感を与えている。伏線は折り重なるように張られ、それらが繋がるときの快感といったらもう。
 主人公・青柳の性格がまたいい。素直で普通で、思わず「がんばれ!」と励ましたくなるような人柄なのだ。
 終盤の展開は主人公にとってけっこう過酷なものであったが、彼が「その事実」を面白がっているような描写があって、前向きな彼に救われる気がした。
95点
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