伊坂幸太郎(角川書店)
泉水と春は兄弟で、弟の春は母親が強姦されたときに身ごもった子であった。二人が大人になったとき、ある事件が起きる。壁などにスプレーで落書きする、悪質ないたずら。それに引き続いて起きる連続放火。兄の泉水は事件の謎を解こうとするが……。
登場人物がみんな変わっていて、それがとても心地良い。
春は突拍子がなくて、その実すべて計算していて巧妙で。ガンで入院中の父は、子供みたいに無邪気かと思えば、圧倒的な存在感で兄弟を戒めたりもする。
ひとり、泉水だけが常識的な雰囲気を持っているが、彼もまた前述の二人にかかると、軽々と常識を飛び越えた行動に出たりする。
変わっていることを理解し、信頼しあう三人のゆるぎない関係が、ひどく羨ましかった。
途中、こんな挿話がある。とある寺の看板に「まさか、楽するために生まれてきたんじゃあるまいな」と書かれていた、と。
いくつもの悲しみを乗り越えてきた春は、この一文を心から肯定する。彼の悲痛な想いが爆発する終盤で、私はこの部分を思い出し、今後彼の人生が少しは楽になることを祈った。
95点
泉水と春は兄弟で、弟の春は母親が強姦されたときに身ごもった子であった。二人が大人になったとき、ある事件が起きる。壁などにスプレーで落書きする、悪質ないたずら。それに引き続いて起きる連続放火。兄の泉水は事件の謎を解こうとするが……。
登場人物がみんな変わっていて、それがとても心地良い。
春は突拍子がなくて、その実すべて計算していて巧妙で。ガンで入院中の父は、子供みたいに無邪気かと思えば、圧倒的な存在感で兄弟を戒めたりもする。
ひとり、泉水だけが常識的な雰囲気を持っているが、彼もまた前述の二人にかかると、軽々と常識を飛び越えた行動に出たりする。
変わっていることを理解し、信頼しあう三人のゆるぎない関係が、ひどく羨ましかった。
途中、こんな挿話がある。とある寺の看板に「まさか、楽するために生まれてきたんじゃあるまいな」と書かれていた、と。
いくつもの悲しみを乗り越えてきた春は、この一文を心から肯定する。彼の悲痛な想いが爆発する終盤で、私はこの部分を思い出し、今後彼の人生が少しは楽になることを祈った。
95点
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