忍者ブログ
ADMINWRITE
よしなしごとども 書きつくるなり
[1]  [2
明野照葉(文藝春秋社)

 東京・大久保。時枝は怪しい商売に手を染めつつも、女手ひとつで香苗を育て上げた。やがて香苗は結婚して茨城へと移り住んだ。茨城・O町。香苗は姑とそりが合わず、ついには娘の真穂を連れて時枝の元に転がり込む。だが時枝は実の孫である真穂に、なぜか冷たい態度を取る。不審に思った香苗は、時枝のふるさと、新潟を訪ね、時枝の過去を探ろうとするが……。
 怪談「累ヶ淵」になぞらえた、女三代(四代?)の因縁が絡まってゆくさまがおどろおどろしい。特に、年端もゆかぬ真穂に老女の霊が乗り移って「キョキョキョキョ」と笑うシーンなど、背筋が寒くなった。
 映像化したら面白そうな作品だが、主人公である香苗が魅力に乏しい人間であるところがネックか。
85点
PR
明野照葉(光文社)

 バンコクに住む修二のもとに、母親が亡くなったという報せが届く。日本へ戻った彼は、実家の登記証書を持ち出し、そのままバンコクへと帰ってきてしまう。
 発作的なその行動は、彼の半生を表すかのようだった。何人もの人間を死に至らしめた、狂気のなせる業……。
 作品の根底には、バンコクのまとわりつくような暑さが漂っている。繰り返されるその描写は、読んでいてつらかった。
 また、修二が、妻である綾にした仕打ちもひどいものだった。綾の苦悩を理解しながら、ごまかすようなことしか言わず、彼女を追いつめたのだ。その卑怯なやり口には、まったくいらいらさせられた。
65点
芥川龍之介(文藝春秋)

 十八の短編だが、いずれ劣らぬ名作ぞろいである。ユーモラスな「鼻」。芸術家の業を描いた「地獄変」。ミステリーのような「藪の中」。
 そんななかでも遺作となった「歯車」は秀逸である。有名な作品なのであらすじは省くが、あの世とこの世のきわを、行きつ戻りつしているような危さに満ち満ちている。何を見ても「死」に結び付けようとする、主人公の異様に研ぎ澄まされた神経に、読んでいるあいだ中緊張を強いられた。
 怖い話、おどろおどろしい話はたくさんあれど、この作品ほど負のエネルギーに吸い込まれそうになる作品は、そうはないだろう。
90点
青井夏海(東京創元社)

 連作短編集。
 万年最下位のプロ野球球団「東海レインボーズ」。球団のオーナーである多佳子が、いろいろな事件の謎解きをする。
 野球の試合内容と、事件の動機などが絡み合うという、斬新な手法が楽しめた。
 完全試合目前、たった一球の判定でがたがたに崩れていくピッチャー。
 完全犯罪を企む犯罪者も、小さなほころびから信じ難い失敗をしてしまう……そんな繋がりが無理なく描かれている。
 また、野球を知らない人でも知らないなりに楽しめる作品だと思う。
75点
相田みつを・佐々木正美(小学館)

 「子育て」に関連性のある詩をまとめた詩集。帯にある「心の休憩室」という言葉が、的確に本書の内容を表していると思う。
 ひとつひとつの詩に解説があって、それもまた心に響く。
 読んだ瞬間は「そうだよねぇ。子供の良いところに目を向けてあげないとね」とつくづく思わされた。
 ま、でもそんな思いは、子供を前にすると吹っ飛んでしまうのが世の常でして、日日是葛藤。
75点
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[10/23 まきまき]
[10/23 もか]
[10/06 まきまき]
[10/06 ぴーの]
[08/31 まきまき]
プロフィール
HN:
まきまき
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
アクセス解析

Designed by 湯月   Material by ウタノツバサ
Copyright c [ Back To The Past ] All Rights Reserved.

忍者ブログ [PR]