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百年目

新潮文庫編集部編(新潮社)

 ミレニアム記念特別文庫。豪華な顔ぶれのアンソロジー。阿川弘之、さくらももこ、ビートたけし、町田康……さすがにみんなおもしろい。

 とりわけ気に入ったのは、平岡倭文重の「暴流のごとく」。筆者は三島由紀夫の母親。
 三島が幼い頃に彼女が書いたという日記は、姑との凄まじいまでの確執に覆い尽くされている。姑は癇の強い女性で、三島を母親から引き離して、独占しようとする。三島はそんな祖母に、健気にもなついているフリをする。
 母親が書いたものだから、少し割り引いて考えても、三島由紀夫という人は、本当に純粋で感受性豊かな人だったようだ。彼の作品をまた読みたくなった。
65点
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症例A

多島斗志之(角川書店)

 精神科医である榊は、十七歳の少女の担当医となる。彼女の病気は分裂病か、境界性人格障害か、榊は診断を下しかねていた。臨床心理士の広瀬由紀は彼女を多重人格ではないかと進言するが、榊はなかなか同意できなかった……。

 よく調べて書いたんだろうな、というのが第一印象。精神を病むというのは、こういうことかと合点がいった。そして衝撃的でもあった。
 同時進行する博物館の贋作にまつわる話も、これまた飽きさせない。やがて二つの話が絡まりあってゆく部分もそつがなくてうまい。
 ただ、ラストだけが少々違和感があった。少女の病気の表面化があまりにも急な気がした。
80点

大好きな本 川上弘美書評集

川上弘美(朝日新聞社)

 書評集。書評委員として新聞紙上に書いたものと、文庫などの解説文。
 参った。読みたい本が次から次へと出てきて。
 「好きな人のすすめる本が必ずしも面白いとは限らない」
 という私の中の定説が、一瞬ゆらいで、ゆらいだ末にある本などは即座に注文までしてしまった。

 読売新聞の書評もいつも楽しみにしていたが、こうして一冊にまとまったものを読むことにより、その魅力を再確認した。気取らない文章で、謙虚に、ときには熱く川上氏は書評を書かれている。その生真面目さに打たれた。
 ただ、この本はひたすら「褒めている」書評集なので、川上氏の貶し言葉もちょっと読みたい気もした。
75点

買ってはいけない

週刊金曜日編(週刊金曜日別冊)

 それにしても物議をかもした本だった。最初私もこんなに身体によくないものを堂々と売ってるの!? と心底驚いた。良くない食品添加物を必死で頭に叩き込んで買い物に行ったりもした。でもその後『「買ってはいけない」は買ってはいけない』を読んで、再度驚いた。ちゃんとした調査もせずに書かれている項目もあると言う。もう、何を信じたら良いのやら。

 でも、冷静になって考えると「買ってはいけない」の筆者はあまりに過激だ。外食なら自然食レストランって、うちの田舎にはそんなものはない。蚊に刺されるのも仕方ないって、修行僧でもあるまいし(今時、修行僧だって蚊取り線香くらい使うか)。
 まだ読んでないかた、毎日の食事がまずくなること請け合いです。
50点

真鶴

川上弘美(文藝春秋社)

 京(けい)の夫である礼(れい)は、突然失踪してしまった。彼の日記には「真鶴」の文字があった。
 彼を追うように、何かに導かれるように、たびたび真鶴を訪れる京。真鶴で彼女は、現実と非現実の狭間で揺れ動く……。

 「近い」「遠い」という表現が印象的だった。京はいつも距離を測っている。
 礼は遠いけど近い。恋人の青茲は、遠いというほどではないが近くない。娘の百(もも)は近かったのに、遠ざっていく。
 自分では決められない距離感にもがく京の苦悩が胸に迫る。
 「ついてくるもの」という幽霊? の存在は、私の気に染まらなかった。もしや京は正気を失っているのでは? という疑念がわいて仕方がなかった。
80点

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