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よしなしごとども 書きつくるなり
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川上弘美(新潮社)

 ニシノ君をめぐる10の連作短編集。
 少年の、大学生の、社会人の、死ぬまぎわのニシノ君について、その頃関係のあった女性が彼について語っている。
 女性の性格がまさに十人十色で興味深い。ニシノ君という人は、どんな女性でも好きになれるのか……と思いかけたあたりで
 「どうやったら誰かを愛せるのか」なんて彼はつぶやく。どうやったらってあなた、そんなこと言っておきながら、すぐセックスしたがるのは問題では?
 なんて私もついツッコミを入れたくなる。
 一貫してつかみどころがなくて、ユーレイのようなニシノ君。まっとうな恋愛や結婚など、とても出来そうにもないニシノ君が、次第に哀れに思えてくる。
 でも、どっこい彼は彼なりに「この世」と折り合いをつけながら、心地よく一生を送ったのかもしれない。悩みはあったって、いつもそれを聞いてくれる女性がそばにいたわけだから。
90点
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星新一(新潮社)

 ショート・ショート集。
 彼の作品は、高校生の頃夢中になって読んだ。斬新で、作品にこめられた皮肉、ユーモアや構成の妙にいちいち興奮していた。
 この作品集は「未来」がひとつのテーマとなっており、いろいろな未来の機械が登場する。
 そのなかには今や現実のものとなっているものもあったりして、作者の先見の明に驚きを禁じ得なかった。
 気に入った作品は「ある夜の物語」。クリスマスの夜に、ある男の望みをかなえてあげようとするサンタクロース。その男が望んだものとは……。心がほっとする作品である。
65点
川上弘美(中央公論新社)

 男子高校生の翠は、母と祖母との三人暮らし。平山水絵という恋人もいるし、花田という友達もいる。ごく普通の高校生。
 と彼は自分では思っているが、実は常人とは少しずれた感覚の持ち主なのであった……。

 読売新聞に連載されていた当初も、毎日楽しく読んでいたが、こうして単行本になったものを通して読むと、またいっそう惹き込まれる。
 高校生という、大人でも子供でもない中途半端な状態にいる翠は考える。「自由とは、なんとよるべないものなんだろう。自由とは、なんとこころぼそいものなんだろう」。
 自分が高校生の頃に漠然と感じていた不安感というものを、翠が代弁してくれたような気がした。
 川上氏は嘘ばなしも上手だが、やはりこうした本当らしい小説のほうが私は好きだ。
90点
星野道夫(文藝春秋社)

 1978年から17年間、アラスカで暮らした筆者のエッセイ。一つ一つの話が短くて、非常に読みやすかった。
 テーマはいろいろだが、共通しているのは「念ずれば通ず」ということだろうか。英語の点数が足りなくても、アラスカ大学に入れた。見ることが難しいというカリブーの出産も見た。日本の子どもたちがやってきて一週間、その最終日にオーロラは出現した。嘘みたいだが。
 また、アラスカの厳しい自然に翻弄され、絶望する日もあったであろうに、筆者は愚痴をこぼさない。大自然に対しては謙虚であり続ける。その真摯な態度に打たれた。

 私もいつかアラスカに行ってみたい……日本のそれよりも小さくて可憐だというワスレナグサを見てみたい。
75点
小川洋子(講談社)

 小説家である「わたし」は、物体と共に記憶をも消滅し続ける奇妙な島に住んでいる。
 彼女は、記憶を失わない編集者のR氏を自宅にかくまうことになる。その特性を持つ者は、秘密警察に捕らえられてしまうからだ。

 この本だけ特別な活字で組んであるのかと思ってしまった。それくらい文字が美しく見える作品なのである。
 島の人々は、抗えない運命を淡々と受け入れてい、「在るもの」だけでなんとか生きていこうとしている。
 そのあまりの静けさに、ときに苛立ちさえ覚えた。しかし次第に、彼らなりの身の処し方に納得させられ、ラストの圧倒的な寂寥感もすんなり受け入れられた。
85点
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