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アメリカ居すわり一人旅

群ようこ(角川書店)

 私もその昔、何が何でもアメリカへ行って永住するつもりだった。アメリカに行けばどうにかなる、と信じ込んでいた。
 この本の作者も似たようなことを考えて渡米、それにまつわるエッセイが本書である。
 しかしながら、アメリカ女性というのはキョーレツ。明るくて朗らかで大らかで、なんてことはないのである。人の陰口言いまくり、自慢話しまくり。とにかくパワフル。読んでいる分にはおもしろいけど、実際相手にした日にゃあ、きっとげっそりだと思う。
70点
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土の中の子供

中村文則(新潮社)

 27歳の「私」は、タクシーの運転手。毎日を持て余し、幼い頃の被虐体験を思い出しては、そこにどんな意味があったのかを探ろうとするのだが……。

 独り言を言ったり、現実と妄想の区別が出来なかったり、主人公はかなり危ない状態にあるようだ。読み進むにつれ、彼の狂気にじわじわと絡め取られるような気がしてきて、読むのを投げ出したくなるほどだった。
 主人公の心に平穏が訪れないまま、物語は終盤へと流れていく。しかしラストシーンで彼がつぶやく言葉……「親はいません。今の僕には、もう、関係ないんです」……には、一筋の光明を見た気がした。後ろばかり見ていても仕方がない、前進するしかない、という彼の決心を感じた。
55点

海辺のカフカ

村上春樹(新潮社)

 15歳の誕生日に、家出をした少年。彼は四国へと向かう。一方、中野区に住む、不思議な老人ナカタさんも、西を目指して旅をすることになる。
 やがて二人の時間は交錯しあい、生と死の混沌とした世界が垣間見えてくる。

 いつもながら、リアルな脇役陣がストーリーに深みを与えている。特に、ナカタさんと一緒に旅することになった星野さんが良い。俗物でありながら、心根は素直で温かい。少年が知り合った大島さんの薀蓄もまた、聞き応えがある。
 だが、肝心の主役である少年が、私にはどうにも作り物っぽく思えた。あまりにも博識で、あまりにも老成している。
 15歳のような30歳はいるかもしれないが、この少年のような、30歳のような15歳はいるはずがない。ナカタさんと少年の話が交互に進んでいくのだが、少年の章を読むのが次第に苦痛になってきたほどだった。
 ただ、そんなマイナス部分を補って余りあるほど、魅力のあるストーリーではあった。変な悪ふざけをしてる部分を除けば、神秘的で美しい作品である。
85点

猫背の王子

中山可穂(集英社)

 とある小劇団の主宰者にして同性愛者のミチル。
 主演女優に逃げられ、昔の「男」も彼女を裏切ろうとしている。そんななか、公演の初日が訪れて……。

 とことん利己主義のミチル、彼女に振り回される男と女。こんなに「何様?」な女も珍しいと思う。
 だいたい同性愛や潰れそうな小劇団って、私が最も興味の無い分野(?)なのである。特に同性愛の部分は、ミチルがあまりにもインランで頭悪そうで、引きまくってしまった。
 極め付きはミチルが金持ちの老婆と一晩を過ごす場面。悪趣味としか言いようがない。
 いくらブンガク的文章でカムフラージュしても、低俗は低俗なのである。
30点

キトキトの魚

室井滋(文藝春秋社)

 私ったら、いつのまにエッセイを書いてしまったのかしら?と思ったほど、私が経験したことが書かれていた。
 まず「満開少女」。
 病弱を気取りたくて、友人に自分は心臓弁膜症だと言ってしまう話。私もいつか白血病になるはずだと思い込んでいた。
 それから「赤目」。
 突然白目の部分が真っ赤になってしまった話。
 それは充血と呼ぶにはあまりに激しい、血を塗ったような「赤」で、私も驚いて医者に駆け込んだことがある。毛細血管が切れただけで、あまり心配はなかったのだが。
 他にも俳優ならではの面白い経験がたくさん載っていて、楽しく読めた。
70点

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