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かたみ歌

朱川湊人(新潮社)

 アカシア商店街にまつわる七つの連作短編集。
 優秀な兄と身体が弱い弟。その弟の死を予告するような貼り紙が見つかる。学帽を被った、おかしな少年の仕業らしい。弟は家の近所でその少年に出会うが……『夏の落し文』。
 妖怪のような学帽の少年、喘息発作、天狗の落し文の言い伝え、と背筋がヒヤリとするような描写がいろいろ出てくる。自分が子どもの頃に感じた、得体の知れないものへの恐怖がまざまざと蘇ってきて、息苦しいほどだった。
 他の短編もどこか懐かしく良い味を出しているのだが、いかんせん既読感を感じさせるものが多かった。
75点
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脳男

首藤瓜於(講談社)

 生まれつき感情を持たない男「鈴木一郎」が主人公。彼はコンピュータのようにただ物事を寸分違わず記憶するが"関連付け"ができない。原因と結果が結びつかない。そんな彼がある事件から連続爆破犯人に命を狙われるようになり、やがて彼が入院していた病院を舞台に爆破犯人との対決が始まる……。

 主人公以外の登場人物は皆聞いたこともないような名前で、特殊な特別な彼だけが鈴木一郎(もっとも本名は違うが)。そのココロは?「普通の人間になりたいという彼の内なる欲求の表現」かしら。
 ラストの夢の話がじんわりと良かった。蛇足の反対(って何て言うの?)。
95点

ハサミ男

殊能将之(講談社)

 若い女性が次々に殺される。死体の喉にはハサミが突き刺さっていたため、犯人は「ハサミ男」と呼ばれるようになる。そして彼が三人目の犠牲者を決めたところから物語は始まる。
 犯人の目から語られる部分が多く、そこがリアルで不気味。
 話は逸れるが、私が妙に納得したのはピンクハウス禁止条例のくだり。ごく一部の人だけど、全身ピンクハウスの勘違いおばさんって確かにいる。何かが捨てられない女性なんだろうなぁ。いや、何かを捨ててる女性か?

 閑話休題。
 ラスト近くのどんでん返し、恐れ入りました。え? これって誰のセリフ? ということは、このハサミ男って……。読んだ本はめったに読み返さない私が、読み終わって即、再読。そのくらい衝撃的なラスト。
 ただ残念だったのは、時々出てくる場違いな比喩。ちょっと興醒め。降ってくる雪をさして、踊る天使からこぼれ落ちた羽毛って……あり?
85点

壊れかた指南

筒井康隆(文藝春秋社)

 短編集。
 『犬の沈黙』が面白かった。
 ある植物学者のもとへ出版社からインタヴューアーの青年がやってくる。が、彼はほとんど言葉を発しない。応対した学者の娘婿は困惑し、やがて彼を追い出しにかかるが……。

 身につまされる話であった。私も弁が立つほうではないので、集団の中では黙っていることが多い。
 だが、どうしても自分の意見を言わなければならない場面というのがあるのである。ほとほと困る。困って固まることもしばしばある。
 そんな私には、青年が「喋らなくて済むモノ」になって心底ほっとしたのが痛いほど理解できた。
 私も来世(があるなら)コレになりたい。

 他に『稲荷の紋三郎』も良かった。突然「京極氏」を持ち出すあたりなぞ、筒井氏、相変わらず茶目っ気たっぷりである。
70点

ずいぶんなおねだり

東海林さだお(文藝春秋社)

 久々にショージ君モノを買ってみた。高校生の頃ハマって読んでいた時期があったのだが、次第に飽きてずっと読んでなかったのだ。
 軽妙な語り口は変わっておらず、面白さがマンネリ感を吹き飛ばしてくれる。
 でも何より驚いたのは巻末にあった対談。ショージ君、文面から察するに、小心な気弱男なのかと思っていたのだが、けっこうキツい方らしい。
 ……二十年来誤解しておりました。それとも最近そういう人になったのでしょうか。謎は深まるばかりです。
70点

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