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よしなしごとども 書きつくるなり
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筒井康隆(文藝春秋社)

 短編集。
 『犬の沈黙』が面白かった。
 ある植物学者のもとへ出版社からインタヴューアーの青年がやってくる。が、彼はほとんど言葉を発しない。応対した学者の娘婿は困惑し、やがて彼を追い出しにかかるが……。

 身につまされる話であった。私も弁が立つほうではないので、集団の中では黙っていることが多い。
 だが、どうしても自分の意見を言わなければならない場面というのがあるのである。ほとほと困る。困って固まることもしばしばある。
 そんな私には、青年が「喋らなくて済むモノ」になって心底ほっとしたのが痛いほど理解できた。
 私も来世(があるなら)コレになりたい。

 他に『稲荷の紋三郎』も良かった。突然「京極氏」を持ち出すあたりなぞ、筒井氏、相変わらず茶目っ気たっぷりである。
70点
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