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よしなしごとども 書きつくるなり
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村山由佳(集英社)

 あまりにもありふれた話。電車の中でひとめぼれ、その後の再会、恋愛。その凡庸さがイイと解説にはあったが、それにしても……。私なぞ、最初の10ページで読むのを止めようかと思った。
 しかしこの文庫、4年間で20版。堂々たる数字ではないですか。どんな人が読んでいるのでしょう。うーん、いろんな意味で鼻白んだ。
25点
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森見登美彦(新潮社)

 大学五回生の「私」は、自分を袖にした女性をつけまわしていた。「私」いわく、それは決してストーカー行為ではなく、あくまで研究なのであった……妄想と自意識でぱんぱんに膨れ上がった「私」の、とほほな日常。

 たとえ京大生でも、イケてないとこんなに切ない日々を生きなければならないのかと、単純に驚いてしまった。
 しかも類は友を呼ぶというか「私」の友人たちのダメダメっぷりといったら。でもそれが憎めないというか、声援のひとつも送りたくなるような人たちではあったが。

 「太陽の塔」に関する考察(?)も面白かった。私はそれを見たことがないのだが、大いなる違和感とやらを一度は味わってみたくなった。
75点
橘外男(中央書院)

 四つの短編と、一つの中篇。短編の中の一つ「蒲団」を紹介しよう。
 時は明治。古着屋の主人が、豪華な蒲団を格安で手に入れる。その途端、家業は傾き、尋常ならぬ女性の影がちらつき始める……。

 表現が直截で、かえって新鮮である。しかも文章はきわめて分かりやすいので、自ずと恐ろしい光景が迫ってくるようである。
 そのほか、「仁王門」では泣き「亡霊怪猫屋敷」では身震いした。
 老婆心ながら最後の「解題」を先に読まないほうが無難である。オチまで書いてあって、興味をそがれる。
80点
谷口英久(道出版)

 1円玉で何が買えるか、買えないか。著者が実験してみた見聞録。
 お米を1円分とか、箸袋を1円分とか、そのあたりのエピソードは面白く読むことができた。
 箸袋500個入りで250円。それを1円で2枚買う。領収書も書いてもらう。
 買ってどうする、という疑問はさておき、まぁ売る側もたいした損害(?)はなさそうなので、問題はないだろう。

 でも中には笑えない話もあった。たとえば「落語1円分」。筆者が知り合いの落語家に頼んで41秒間だけ落語を演じてもらったのだ。
 これは読んでいて腹が立った。してはいけないことだと思った。
55点
谷崎潤一郎(新潮社)

 七つの作品が収められているが、私が気に入ったのは「異端者の悲しみ」。
 大学生の章三郎は学校へも行かず、今で言う引きこもりのような状態であった。家は貧しく、妹は肺病を患い、気が塞ぐ毎日。章三郎は己の不運を嘆くのだった……。

 出だしの数ページからして、完璧な文章である。午睡を貪る主人公の夢うつつの世界。やがて覚醒した彼が感じる不条理感。その表現のうまさに圧倒された。
 当代切っての小説家に「谷崎を読むと小説を書く気が失せる」と言わせるだけのことはある。
 友人から借金をした挙句、踏み倒したり、末期の妹に心の中で悪態をついたり、主人公はかなり性格の悪い人間だが、あまりにも端正な文章ゆえか、さほど気にはならなかった。
 むしろそのおバカさんぶりには苦笑を誘われた。
85点
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