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どんどん橋、落ちた

綾辻行人(講談社)

 五つの中短編集。
 いずれも最後に「さて、犯人は?」という質問が読者に投げ掛けられている。もちろん私のような間抜けには一つも分からなかった。
 「伊園家の崩壊」を紹介しよう。明るく平和だった伊園家。だが母・常が狂死してからすべての歯車が狂い始め、一家は崩壊の道を辿る。それは娘・笹枝が殺害されるという事件で、決定的なものとなる。
 と、ここまで読んで気付かれたかたも多いと思うが「イソノ家」と書くと、よりピンとくるだろうか。筆者は「フィクション」だということを強調しているが、あの平和な家族がこんなことになったら、という仮定の話として読むべきなのだろうか……ちょっと悪趣味な気もした。
65点
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ゲルマニウムの夜

花村萬月(文藝春秋社)

 これが芥川賞受賞作……過剰にエロでグロ。思わず読み飛ばしたくなるシーンあり。でも文章は細部まで考え抜かれているという感じを受ける。職人芸という意味で谷崎潤一郎を思い出した……のは私だけだろうな。何年も日本語を勉強してぺらぺら話せるようになった外国人でも、この文章は書けないだろう。
 筆者は以前、本の雑誌「ダ・ヴィンチ」でエッセイを連載していた。それを読んだときも、内容は別として「頭いいな、この人」と思った。
70点

一瞬の光

白石一文(角川書店)

 東大卒で一流企業に勤める橋田。
 彼はふとしたことで香折という女性と出会う。複雑な家庭に育ったという香折を知るにつけ、橋田は彼女のことが頭から離れなくなる。いっぽうで、彼は社長の姪である女性との交際も続けるのだった。

 どいつもこいつも超エリート、美男美女で、最初は物語に感情移入できなかった。
 だが読み進むうちに、登場人物たちの本音が透けてみえてきて、気付いたら夢中になって読んでいた。
 主人公の橋田というのは、実は非常に危険な男で、その根底にあるのは冷たさだと私は思った。
 最終的に一人の女性を彼は選ぶのだが、それは優しさゆえでは決して無い。彼の執着心がそうさせたような気がして、なんだか薄ら寒い気持ちになってしまった。
75点

閉鎖病棟

帚木蓬生(新潮社)

 つい最近まで名前すら知らなかった作家だが、読ませる読ませる。出だしの部分、脈絡のない話が続いて疑問に思ったが、後になってそれは効果的な伏線だったとわかる。
 ニュース等で殺人犯が「誰かの声に命令されてやった」と供述している、なんて話をたまに聞くが、私はそのたびに不審に思っていた。
 が、この本を読んで、その言い分を少しは信じる気になった。精神を病んでゆくってのはこういうことなのね……と納得させられた。
 大団円の裁判の部分が、泣かせる。チュウさんの善良な性格が際立つ。こういう救いのあるラストは、読後感も爽やかで良いと思う。
85点

四〇九号室の患者

綾辻行人(森田塾出版)

 自動車事故で大けがをした「わたし」は、記憶を失って精神科病棟に入院を余儀なくされていた。
 やがて少しずつ記憶が戻りはじめるが、それはおぞましい殺人の記憶だった……。
 作者は21歳のときに、この作品の草稿をしたためたそうだ。なるほど、文章が少々青臭い。ラストのどんでんがえしも、私でさえ予想がついた。
 きっとこの作品は、綾辻氏のファンだったら楽しめるのではないだろうか。例えて言うなら、今ではすっかり成功した画家の、若かりし頃のラフスケッチを見せてもらったような、そんな感覚だろうか。
60点

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