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舟を編む

三浦しをん(光文社)

 大手出版会社である玄武書房で、新しい辞書を編纂することになる。もうすぐ定年の荒木、元営業マンの馬締、軽薄な西岡……それぞれの思いをのせて、辞書は形になってゆく……。

 本屋大賞受賞、堂々のベストセラーということで、かなり期待して読んだ。確かに面白い。おそらくほとんどの人が知らない「辞書づくり」の世界が興味深いし、馬締氏の恋のゆくえも気にかかる。
 がしかし。何か、そぐわない感じがずっとして、読んでいて落ち着かなかった。それは著者の作風が軽いせいかもしれない。辞書という重々しい世界を、わざと軽やかに描いたのかもしれないが、違和感だけが残った。
 同じ題材で、たとえば小川洋子氏あたりが書いたらどんなふうになるだろう。正直、そっちのほうが読んでみたい。
70点
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ウランバーナの森

奥田英朗(講談社)

 '79年の夏。世界的に有名なポップスターであるジョンは、妻ケイコと息子とともに、軽井沢でのんびりと過ごしていた。だが、体調を崩して病院通いを余儀なくされる。その病院から家に帰る道すがら、彼は亡くなったはずの人たちと再会するという、不思議な体験をする。

 この物語はフィクションであるが、「あの」ジョンという人間はこういう性格だったのだろうな、と思わせる説得力がある。いじめっ子だった少年時代。捨て鉢だった青年時代。
 特に友達の家に招かれて、そのあまりにも温かい家庭の雰囲気に、つい暴言を吐くシーンなどは、彼のねじれた心がよく表れていると思った。
 ただ、全編を通しての便秘話にはちょっと辟易した。面白いけど笑えない。
65点

私が語りはじめた彼は

三浦しをん(新潮社)

 とある大学の教授である村川。彼はかなりの浮気者であった。彼を巡る人々が織り成す物語……連作短編集。

 村川は最後まで登場せず、他者の口から彼の言動が語られる。その不在が、逆に彼の性質を見事に浮かび上がらせる。
 おそらくは飄々と浮気をしていた村川。周囲のものだけが騒ぎ、うろたえ、憎悪をつのらせる。そのあまりの温度差に驚くばかりであった。
 三浦氏の作品はエッセイしか読んだことがなかったが、こんなにきちんとした文章を読ませてくれるとは思っていなかった。短くて素っ気ない表現のなかに、心に沁み入る珠玉の部分がたくさんあった。
90点

最悪

奥田英朗(講談社)

 小さな鉄工所の社長・川谷は、騒音問題で近隣から責め立てられていた。銀行員のみどりは、支店長のセクハラや不真面目な妹のことで頭を悩ませていた。チンピラの和也は仲間と働いた盗みがもとで、ヤクザに脅迫される羽目に陥っていた。
 三人の運命がやがて交じり合い、とんでもない犯罪へと落ちてゆく。

 それぞれの生活が丁寧に描かれていて、引き込まれた。特に川谷に襲いかかってくる数々の不運は、リアルで同情を禁じ得なかった。
 ある「事件後」の彼らの逃避行には少し無理があるような気がしたが、その点以外は完璧と言っても過言ではない一冊であった。
95点

極め道

三浦しをん(光文社)

 ウェブマガジンに連載していたエッセイをまとめたのが本書。
 この言い回し、言葉使い、エッセイ系のヒットサイトでよく見かける。ある種、パターンとして定着しているのであろうか。
 とにかく、軽くて辛口で、面白い。

 私が気に入ったのは「恋横車生花実成上」、「動かざること山の如し」、と「女の友情」の出だし。
 あとは漫画に関する話が多くて「女の友情」も後半はほとんど理解不能だった。そういう、内輪ネタのような部分を読むのが少し辛かった。
70点

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