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職人を泣かせて建てた300年住める家

荻原博子(角川書店)

 建材には向かないとされるクリの木を使って、木造軸組工法で家を建てた筆者の奮闘記。

 自分も家を建てる前にこの本に出会っていれば……とほぞを噛んだ。こじゃれた洋風建築に目を奪われ、和風と聞いただけで毛嫌いしていた自分がどんなにマヌケだったか思い知らされた。
 ただ、どんなに頑張っても、この筆者のマネはできないと思う。第一に豊富なコネ。こういう家造りは人脈がものをいう。それと金。ふた言目には「手が出ない」と言いつつ、かなりな資金力である。
 あまりに恵まれていて、苦労話も自慢話に思えてくる。次第に不快感が募る話ではある。
70点
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耳そぎ饅頭

町田康(講談社)

 エッセイ集。
 独特の文体ゆえ、理解不能な部分もあった。そして虚実のあいまいな部分も。だがそんなことを気にせずに読んでいくと、するっと分かってくる(あるいは分かった気にさせてくれる)。

 「地獄の快男児」。ファストフード店でフライドポテトの処理に困る筆者。いらない。けど捨てられない。しねしねと芋を食う筆者。くだらなくも面白い。
 全体的に筆者は朝令暮改、そのポリシーのなさはかえってすがすがしい。
65点

陰陽師

夢枕獏(文藝春秋社)

 ううむ、おれは京極夏彦のあやかしの話をほつほつと思い出したぞ……陰陽師(おんみょうじ)ふうに言うとこうなるか。
 時代小説はほとんど読まないのだが、この本を読んだら、こういうみやびな世界にも興味をそそられた。
 嫋(じょう)と鳴る琵琶の音、ふうわりと身に纏った狩衣(かりぎぬ)。加えて主人公の陽陰師安倍清明は長身で色白、目元は涼しく秀麗な顔。あぁもっと読みたい。ハマってしまいそうな自分がこわい。
80点

巨人の磯

松本清張(新潮社)

 五つの短編が収められているが、表題作『巨人の磯』が面白かった。
 茨城の大洗海岸。死後二週間と目される膨張した死体が漂着する。捜査線上に一人の男が浮かぶが、彼にはアリバイがあった。そこにはどんなトリックが?

 私事であるが、大洗といえば海水浴にも行ったことがある。また、被害者の別荘があるという五浦海岸もよく知っている場所である。それらのことが相まって、まるで現実に起きた事件のように、興味深く本書を読んだ。
 もちろんストーリーも良かった。次々に謎を読者に広げて見せ、最後の最後ですぱっと事件を解決する……清張らしい、引き締まった短編であった。
75点

明日の記憶

荻原浩(光文社)

 不眠や物忘れに悩んだ佐伯は、精神科を受診する。そこで思いもよらぬ病名、「若年性アルツハイマー」を宣告される。次第に進む病状に、彼は恐怖と焦りを覚えるのだった……。

 アルツハイマーという病気の恐ろしさに、幾度も読むのを中断させられた。
 決して回復することはなく、進行を遅らせるのがやっとだというこの病気。自分が何者であるのかも分からなくなっていくというこの病気。それは「死」よりも残酷なことではないだろうか。
 終盤、佐伯が昔陶芸をならった師のもとを訪れる部分がとても良かった。達観とまではいかないが、彼が穏やかな気持ちを取り戻す瞬間が確かにあったことを丁寧に描いていて、良かった。
85点

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