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よしなしごとども 書きつくるなり
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阿刀田高(講談社)

 短編集。思わず背中がひやりとするような作品ばかりであった。
 「来訪者」。真樹子は裕福な家庭の主婦であった。あるとき、子供の出産時に世話になった雑役婦の初江の来訪を受ける。ずうずうしい初江に眉をしかめる真樹子。初江の狙いは何なのか?
 初江を見下し冷たくあしらおうとする真樹子は、自分自身のエゴイズムにまったく気付いていない。初江が辞去したあとに分かる恐ろしい事実は、そんな彼女に対する罰なのかもしれない。
 最後に収録されている「縄」という作品は、忘れられない作品になりそうである。でも後で(特に、眠れない深夜に)思い出したくないストーリーなのだが。
85点
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ピエール瀧(太田出版)

 雑誌「テレビブロス」に連載していた旅行記を単行本化したのが本書。
 オールカラーで1480円は安いと思ったら、装丁が、あのへんな毛が付いてる大学ノートそのもの。持ち歩いているうちに、すっかりくたびれてしまった。
 その辺からして、おふざけムード満点なのだが、中身がまた(良い意味で)頭悪そうでたまらない。

 旅行記といっても、時代に取り残されたようなレジャー施設や意味不明なお祭りなどの取材が多い。そのうすら寒さをストレートに活写していて、楽しいんだか楽しくないんだか、読んでるほうも訳が分からなくなってくる。
 全体的にダラダラした本だが、唯一村田兆治との対談は真面目で面白かった。
60点
鈴木光司(角川書店)

 ウィルス性のガンが爆発的勢いで流行し始めた地球。その病の謎を解くべく、一人の青年がアメリカへと旅立つ。

 「リング」「らせん」とどう繋がるのかなぁと思っていたら、そういうことか。どういうことかと言うと……一番重要な設定をここに書くと、即ネタバレなのでほとんど何も書けない。まぁとにかくとてつもなく深淵な話になったものだ。
 キーワードは「神」あるいは「創造主」。諸行無常の響き有りとでも言っときますか。
80点
日垣隆(新潮社)

 刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない」
 この一文を盾に、悪意の犯罪者が罪を償うことなく娑婆に出てくる恐怖……。

 文庫本の帯にこうある。「無罪判決」その時、殺人者はニヤリと笑った。
 売らんかなの惹句かと思ったら、どうやら事実らしい。
 80年の新宿バス放火殺人事件、82年の深川通り魔殺人事件の両被告は、判決の瞬間に笑ったというのだ。精神異常者のふりをすれば刑を免れる、まさにしてやったりの笑顔。恐ろし過ぎる。
 また飲酒や覚せい剤による酩酊状態で罪を犯したときは、心神耗弱とみなされて刑が軽減されるという。加重ではなく軽減? まったく信じ難いことである。
 一刻も早くこのような悪法を改正し、少しでも被害者が救われるようにして欲しいものである。
70点
鈴木光司(角川書店)

 日本のホラー界もこの本くらいから活気が出てきたように感じられた。その後でた本は「リング」より怖いとか、「リング」を凌ぐとかそんな広告を見かけるようになったから、やはり引き合いに出されるということは、面白いということの証明であろう。
 この作品で最も吸引力があったのはその設定ではないだろうか。ビデオを見たら死ぬという、この設定が上手いと思う。そんなばかなと思いながらも、リアリティのある文章に惹きこまれた。
85点
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