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よしなしごとども 書きつくるなり
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林真理子(小学館)

 30代になったばかりの沙美は、広告代理店から化粧品会社のPR担当に転身する。そこで彼女は自らの才能を開花させ、次々に困難を乗り越えてゆく。

 主人公が仕事にのめり込んで、無難な彼との結婚さえ蹴ってしまうところなどが痛快であった。
 だが、化粧品業界のどす黒い内幕や、身勝手な男たちの言い草や、読んでいてあまり愉快でない部分が多かった。
 主人公の沙美も、高慢ちきで計算高く、知り合いにはなりたくないタイプである。
50点
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城山三郎(新潮社)

 妻を喪った夫・城山氏が、彼女との出会いから別れまでを綴った手記。
 城山氏といえば、お堅い経済小説のイメージがあるが、この本を読んでそれががらりと変わった。奥様のことが心底好きでいとおしく思う、優しい男性だったのだ。

 まず出会いのシーンが圧巻。とある図書館の前で、偶然出会う二人。「間違って、天から妖精が落ちて来た感じ」。一度でいいから、男性にこんなふうに思われてみたいものである。
 結婚後も、茶目っ気のある奥様に幾度と無く救われる城山氏。女は愛嬌とはよく言ったものだ。
 そして悲しい別れ。彼の憔悴しきった姿は、「父が遺してくれたもの」という、巻末の次女の手記で明らかになるのだが、それがまた涙を誘う。
 夫にここまで愛される妻、羨ましくもあり、自分とギャップがありすぎて不思議な感じも、正直した。
85点
阿部和重(新潮社)

 高校を退学した春生は、親から仕送りを貰って、バイトをするでもなく、都会で一人暮らしをしていた。
 彼のもっぱらの関心事は「トキ」。佐渡にいるトキを逃がす(あるいは殺す)ことを決意し、彼は暴走し始める。
 
 まったく何という小説だろうか。読んでいる間中、いらいらさせられた。こんな腐った人間の話だと分かっていたら読まなかったのに。
 春生の性格をひと言で言うなら、自己中心主義である。自分は悪くない。自分は賢い。ストーキングしようが、トキを殺そうが、自分には非はないのだ。そののぼせ上がった考え方に、本気で気分が悪くなった。
10点
原田宗典(集英社)

 「しおしおのぱー」なんてまるで意味不明だが、そのニュアンスは正確に伝わってくる。この人のエッセイは笑える。
 お薦めは「世にも涼しい医者物語・あるいは血も凍る体験」。おできができて皮膚科に行ったら、麻酔無しでいきなり切開されて気絶してしまった、という話。
 ほんと医者だけはコワイ。次にどんな攻撃(?)されるかわかんないんだもん。
75点
神薫(バジリコ)

 私立K大医学部を経て研修医となった筆者の赤裸々エッセイ。
 K大といえば私大の雄、どんな豪華なお話が読めるのかと思いきや、研修医に対する待遇はあまりよろしくないようで。その意外性でもって楽しめた。
 また、いろいろな病気、怪我の話も興味深かった。やけどをした患者に皮膚移植をしたら、そのあと縮れっ毛が生えてきた話(移植したのは股の部分の皮膚だった)、とか。唇から毛が生えてくる話(小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』)を偶然にも読んだばかりだったので、事実も小説も奇なり、とひとりごちた。
 それから超が付くお嬢様女医の話。病気に対する免疫がほとんどない彼女、子供が罹るような流行り病に次々に罹患してしまったそう。お気の毒に。

 ※筆者であるPNUさんは、ネット上でお付き合いいただいているかたです。
  なので点数を付けるのは控えますが、とても楽しい本なので、心からおすすめします。
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