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よしなしごとども 書きつくるなり
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如月小春(婦人生活社)

 劇作家・演出家である如月小春さんの子育てエッセイ。38歳で第一子「茉莉」ちゃんを産んだ筆者の、とまどいやうれしさが痛いほど伝わってくる。

 エッセイの出だしのひと言、
 「なんでうちに、こんなのがいるんだろう?」
 というのは、私も何かに付け思ったことだ。今までの静かな生活はいずこへ、と。
 やがて彼女は働くママになる。子育てと仕事の両立に悩んだり、子連れに理解の無い世間に怒ったり、それはもう私も通ってきた道なので、共感しまくりなのであった。
 そして次のひとことは涙なしには読めなかった。
 「今は、こうして抱きしめていよう。抱きしめていられる幸福に浸っていよう」
 彼女は44歳という若さで急逝されたのだ。きっといつまでだって抱きしめていたかっただろう、まだ幼い娘を。
80点
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有川浩(角川書店)

 塩の結晶が隕石のごとく地球に落下して、その瞬間から人間が塩化してしまう現象が始まる。崩壊してゆく社会。その中で、元自衛官の秋庭と高校生の真奈は出会う……。
 秋庭と真奈の二人の前に、いろいろな人間が現れるのだが、そのバリエーションが豊富。最愛の女性を失った男、刑務所から脱獄し自暴自棄になった男、ルポライターを夢みる、鼻持ちならない中学生、そして自衛隊の司令官である入江という男。それぞれが語る言葉を持ち、きちんとキャラが立っている。ストーリーもテンポ良く進み、そつがない。
 しかし手放しで「面白かった」と、なぜか言えない。秋庭と真奈の有りようが、あまりに良くあるパターンだから、か。ひねりがなくて展開が読めてしまうのだ。
 この手の恋愛話は、テレビや映画で散々見た気がする。いたいけな若い娘と無骨だが優しい男……設定からして古い。
70点
有川浩(新潮社)

 昔読んだ本の感想をネット上で見つけた伸行。物語のラストに納得できず、ずっと心に引っ掛かっていた彼は、それを書いた「ひとみ」にメールを送る。そこから二人の交流が始まり……。
 そうとは思わずにこてこての恋愛モノを読んでしまった。ま、でもなかなか良かった。
 障害をもつひとみは、ときに手が付けられないほどわがままになる。伸行も彼女を理解しようと努力するが、的外れなことをしたりしてしまう。二人の想いがすれ違うたび、苛立ちが募る。
 ひとみは本当に「面倒な女」だ。今まで受けたいろいろな不親切、無理解を、全部伸行にぶつけて彼を試す。普通の男性ならすぐに嫌になるだろう。でも伸行は我慢強く彼女に付き合う。惚れた弱みか、とてつもない包容力のなせるわざか。
 こんな男性いないよなぁと思いつつ、彼の優しさにほだされて(?)一気に読了させられてしまった。それでもやっぱり、こんな男性はいないと思う。しつこい?
70点
嵐(角川グループパブリッシング)

 2010年春。嵐の5人がそれぞれの興味の赴くまま、日本各地へ旅した……全国の小・中・高等学校へ贈られた本のポケット版。
 これだけの人気グループの一員なら、おそらくどこへ行っても誰と会ってもあまり拒絶されることは無いだろう。そういったことを差し引いて考えても、5人は常にすっと場に溶け込む能力を持っているような気がした。
 櫻井くんの旅を紹介したいところだが、松本潤くんの旅がとても印象に残った。隠岐の島で暮らす人々に会う旅。身の丈に合った暮らしで、日々を豊かに暮らす人々。島の魅力は「人」だと言い切る高校生。こんなすごい場所が日本にあるなんて……老後は離島もいいな、なんて柄にもなく思ってしまった。

 余談ですが。
 ポケット版ということで、寄贈版をそのまま縮小したのはわかるけど、字が小さすぎてつらかったー。
採点なし
綾辻行人(講談社)

 これがデビュー作という事実にまず驚いた。話の展開はスピーディーだし、犯人の正体には意外性はなかったが、トリックはよくできていると思う。
 しかぁし!
 今回私が一番言いたいことは文庫版の解説について。何が言いたいんだ、鮎川哲也氏。
 まず、クリスティの「そして誰もいなくなった」とこの作品を比較している点。初めに作り出すことの難しさを、故意に無視しているように感じられる。改造してより良くなるのは、至極当然の事であろう。
 そして一部の読者が評論家気取りで新人を叩くのが面白くない、と。そんなことを「解説」に書くこと自体どうかと思うし、つまらない作品を読んだら誰しも「つまらない」と言ってしまうと思うがどうだろうか。
80点
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