安井俊夫(メディアファクトリー)
一級建築士でもある筆者が、10編のミステリー小説に登場する建物を解析、図面化した労作。
森博嗣氏の『笑わない数学者』の検証が面白かった。
天文台を住宅に改造したという「三ツ星館」。お椀を三つふせたようなこの館、資産価値は数十億だという。
だが明らかに建築基準法違反! 画竜点睛を欠くとはこのことか。
この作品に限らず、場所の特定、建築コストの設定(不便な場所なら経費がかさむ)、古い建物なら時代考証までしているところがさすがというか、考え抜かれていると思った。
※筆者である安井俊夫氏は、ネット上で長年お付き合いいただいている建築士さんです。
それとは関係なく、楽しんで読むことが出来た一冊でした。
ただ点数をつけるのはあまりにおこがましいので控えさせていただきます。
一級建築士でもある筆者が、10編のミステリー小説に登場する建物を解析、図面化した労作。
森博嗣氏の『笑わない数学者』の検証が面白かった。
天文台を住宅に改造したという「三ツ星館」。お椀を三つふせたようなこの館、資産価値は数十億だという。
だが明らかに建築基準法違反! 画竜点睛を欠くとはこのことか。
この作品に限らず、場所の特定、建築コストの設定(不便な場所なら経費がかさむ)、古い建物なら時代考証までしているところがさすがというか、考え抜かれていると思った。
※筆者である安井俊夫氏は、ネット上で長年お付き合いいただいている建築士さんです。
それとは関係なく、楽しんで読むことが出来た一冊でした。
ただ点数をつけるのはあまりにおこがましいので控えさせていただきます。
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安岡章太郎(新潮社)
安岡氏の母方の親族について、系図に基づいて語った随筆。
筆者が生まれたのが大正9年、そこから父母、祖父母、曽祖父母と遡る話なので、歴史に疎い私にはけっこうつらい読書となった。
だが筆者が注目した西山麓という漢詩人についての記述は、面白く読むことができた。貧しく怠惰だった麓(ふもと)。遊郭上がりの女性と一緒に暮らしたり、乞食になると決心したり、破天荒な人物だったらしい。
だが彼の奇行を、安岡氏はあたたかい眼差しで描き出す。彼の漢詩に風流を感じ取り、その才能を認めて賛辞を送るのだった。
60点
安岡氏の母方の親族について、系図に基づいて語った随筆。
筆者が生まれたのが大正9年、そこから父母、祖父母、曽祖父母と遡る話なので、歴史に疎い私にはけっこうつらい読書となった。
だが筆者が注目した西山麓という漢詩人についての記述は、面白く読むことができた。貧しく怠惰だった麓(ふもと)。遊郭上がりの女性と一緒に暮らしたり、乞食になると決心したり、破天荒な人物だったらしい。
だが彼の奇行を、安岡氏はあたたかい眼差しで描き出す。彼の漢詩に風流を感じ取り、その才能を認めて賛辞を送るのだった。
60点
柳田邦男(文藝春秋社)
中学生の頃から心を病んでいた息子が、二十五歳で自殺を図って脳死状態となる。父親の後悔は、察するに余りある。心の病も長い間気付いてあげられず、自殺も止められなかった。
そして脳死状態となったとき「臓器提供」の決心を迫られる。しかも奥さんはずっと半病人のようになっていて、もうこれでもかってくらい過酷な人生。それでも作者は淡々と筆を進めていく。
きっと作者はいろいろなことに決着をつけて、この作品を執筆したのだろう。その、ある種の潔い感じに感銘を受けた。
80点
中学生の頃から心を病んでいた息子が、二十五歳で自殺を図って脳死状態となる。父親の後悔は、察するに余りある。心の病も長い間気付いてあげられず、自殺も止められなかった。
そして脳死状態となったとき「臓器提供」の決心を迫られる。しかも奥さんはずっと半病人のようになっていて、もうこれでもかってくらい過酷な人生。それでも作者は淡々と筆を進めていく。
きっと作者はいろいろなことに決着をつけて、この作品を執筆したのだろう。その、ある種の潔い感じに感銘を受けた。
80点
伊坂幸太郎(東京創元社)
大学生になりたての椎名は、引っ越してきたアパートで奇妙な青年と出会う。河崎と名乗る彼は、いきなり「書店を襲って広辞苑を奪おう」と持ち掛けてきた。彼の真意を掴みかねた椎名は、取りあえず申し出を断るが……。
二年前に起きた事件と、現在の出来事がゆっくりと近付いてくる描き方が、とても上手い。
登場人物も、みな魅力的で飽きさせない。ブータンから来たという優しいドルジ。向う意気が強くて個性的な琴美。飄々として女好きな河崎。唯一、ごく普通な椎名。
彼らのいきいきとした会話が、ストーリーの奥行きをさらに深めている。
95点
大学生になりたての椎名は、引っ越してきたアパートで奇妙な青年と出会う。河崎と名乗る彼は、いきなり「書店を襲って広辞苑を奪おう」と持ち掛けてきた。彼の真意を掴みかねた椎名は、取りあえず申し出を断るが……。
二年前に起きた事件と、現在の出来事がゆっくりと近付いてくる描き方が、とても上手い。
登場人物も、みな魅力的で飽きさせない。ブータンから来たという優しいドルジ。向う意気が強くて個性的な琴美。飄々として女好きな河崎。唯一、ごく普通な椎名。
彼らのいきいきとした会話が、ストーリーの奥行きをさらに深めている。
95点
柳家三治(講談社)
噺家である柳家小三治。小三治は「枕」のほうが面白いってんで出来たのが、この本である。
枕というのは、落語の本題に入る前に話す、いわばイントロのようなもの。それにしては話が長すぎのようだが、面白ければ問題は無い。
特に笑えたのが「駐車場物語」。
彼がオートバイ用に借りていた駐車場に、あるときホームレスの男が住み着いた。男はきれい好きらしく、駐車場にある水道を使っては洗濯をし、箒で駐車場内を掃いたりもする。そんな男に立ち退きを要求することもままならず、ずるずると月日は流れ……。
ホームレスなのに(?)楽しそうに、礼儀正しく生きる男に振り回される師匠の言動が笑わせてくれる。
その他、日本の塩がまずいという話や、サンフランシスコの英語学校に留学する話など、さすがに噺家さんは上手いなぁと唸ってしまうような話が盛りだくさんである。
75点
噺家である柳家小三治。小三治は「枕」のほうが面白いってんで出来たのが、この本である。
枕というのは、落語の本題に入る前に話す、いわばイントロのようなもの。それにしては話が長すぎのようだが、面白ければ問題は無い。
特に笑えたのが「駐車場物語」。
彼がオートバイ用に借りていた駐車場に、あるときホームレスの男が住み着いた。男はきれい好きらしく、駐車場にある水道を使っては洗濯をし、箒で駐車場内を掃いたりもする。そんな男に立ち退きを要求することもままならず、ずるずると月日は流れ……。
ホームレスなのに(?)楽しそうに、礼儀正しく生きる男に振り回される師匠の言動が笑わせてくれる。
その他、日本の塩がまずいという話や、サンフランシスコの英語学校に留学する話など、さすがに噺家さんは上手いなぁと唸ってしまうような話が盛りだくさんである。
75点