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女學校

岩井志麻子(マガジンハウス)

 時は大正。若く美しい人妻、花代子と月絵。二人は花代子の家の洒落た洋間で、女学校時代の思い出を語り合う。甘やかでどこか蠱惑的な思い出話。

 これは感想を述べるのが難しい。夢の世界をさまようような二人の話に、なかなか感情移入できないのだ。その夢は、あの手この手で描き出されるのだが、皆インパクトに欠けていて、心に迫るものがない。
 檸檬色の壜に入った、菫の砂糖漬け。仏蘭西のチョコレェトの銀の箱。そんな小道具にはちょっと魅力を感じたが、内容はいただけない。
55点
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ぼっけえ恋愛道-志麻子の男ころがし

岩井志麻子(太田出版)

 志麻子姐さんが、恋愛について語るエッセイ。これは文句なく面白い。

 その一。容姿に恵まれていなくても、モテる女性はいる。別な魅力でがんばってる女性。対して優しくない男性を恨み、イイ女を妬むばかりの女性は「ブスのデフレスパイラル」で出口がない。
 その二。腕時計に対する価値観は、恋人選びの価値観に通じるものがある。いつも付けてないと気が済まない、とか。数をいっぱい揃えたい、とか。一点豪華主義、とか。
 その三。正直って残酷。それにラクチン。自分がラクになりたいから言ってるところがある。相手を思って言ってるんじゃない。
 とまぁ、挙げればキリがないほど、なるほど、な話が満載なのである。
 そして登場する数々のエピソードが本当に傑作だし、それによって導かれる恋愛論は説得力がある。自分はモテないと悩んでる人にはうってつけのエッセイである。
85点

ブラディ・ローズ

今邑彩(東京創元社)

 薔薇の咲き乱れる、広大な屋敷に住む苑田。彼と偶然知り合った花梨は、やがて親しくなり、後妻として屋敷に住まうことになる。
 苑田は最初の妻、二番目の妻、ともに自殺で失っており、花梨も脅迫めいた手紙をもらうようになる。彼女に憎しみを抱く脅迫者は、一体誰なのか。

 初めて読んだ作家にもかかわらず、なぜか既読感があった。あまりひねりのない構成のせいだろうか。だが物語は丁寧に書かれていて、読みやすいことこの上ない。
 謎解きに頭を使うより、花梨の心象風景に思いを巡らせたほうが、この作品にとってベターだと思う。
70点

おかしな二人

井上夢人(講談社)

 「岡嶋二人」という作家は、その名の通り「イズミ」と「徳さん」の二人だった。彼らはひょんなことから「乱歩賞を取ろう」ということになって、小説を書き始める。
 ずぶの素人が、手探りで作品を書き上げ、四度目の挑戦で受賞する。このへんのプロセスはけっこう面白かった。推理小説の作法は、かなり参考になると思う。
 ところで、このエッセイは「イズミ」(井上夢人)が一人で書いたものだ。前半は読んでいて楽しかったが、後半は筆者の、いわゆる愚痴がちょっとうっとうしかった。作家だからって、ここまで書くか? と思ってしまった。
 しかしながら、ナントカ賞を受賞すると、みんな彼らのように締め切りに忙殺されるようになるのだろうか。機関銃のように小説が書けないと、編集者たちに潰されそうである。
70点

氷壁

井上靖(新潮社)

 登山仲間の小坂と魚津。二人が穂高に登山したとき小坂のザイルが切れて、彼は死んでしまう。
 人妻を愛して苦しんでいた小坂。彼の死は事故か自殺か。

 私は登山というものに全く興味がない。そんな私でさえこの作品には心動かされた。
 山に闘いを挑むものたちの考え方、ひいては生き方に、素直に感動できた。
 ただ、そうは言っても終盤の展開には違和感が残った。こんな悲しい結末にしなくても良かったのではないだろうか。
80点

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