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七人の敵が居た

石川達三(新潮社)

 私はあまりひとりの作家にのめり込まないようにしているが、例外もある。私の本棚の黒いコーナー=太宰治、赤いコーナー=アガサ・クリスティ、そして水色のコーナー=石川達三。一時期ハマっていた。
 その中の一冊。大学教授が教え子を乱暴したとして逮捕される。だがそれは合意の上であったと教授は主張する。はたして真実は?
 この話、実話だそうだ。著者は裁判記録を綿密に調べ上げ、この事件の不明瞭な点を繰り返し繰り返し、それはもうねちっこく書いている。裁判の杜撰さが肌で感じられるほどである。
 日本の政治は腐っているなんてよく耳にするが、日本の司法も腐っているのか!? と暗澹たる気分にさせられた。
70点
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トリツカレ男

いしいしんじ(ビリケン出版)

 いろんなものに取り付かれる男、ジュゼッペ。オペラ、三段跳び、探偵ごっこ、昆虫採集。そしてあるとき一人の少女、ペチカに取り付かれてしまった。

 何をするにしても一生懸命なジュゼッペは、ときに愚かしくも見える。だが、その突き抜けた純粋さゆえ、得難い人物にも思えた。脇役のハツカネズミの、皮肉な物言いもまた愉快。
 苦笑させられたり、しみじみ考えさせられたり……童話のようなストーリーだが、どんな年齢の人が読んでも楽しめる一冊であろう。
80点

ぶらんこ乗り

いしいしんじ(新潮社)

 ものすごく頭が良くて大人びてて、ぶらんこに乗るのが得意な私の弟。でもある事故がきっかけで、弟は声を出せなくなってしまう。そして弟は話すかわりに、ノートに物語を書くようになった……。

 弟の「おはなし」がとても良い。真っ直ぐで、ちょっと残酷で切なくて。特に「歌う郵便配達」が素晴らしかった。
 いっぽう「私」の話し方はカンに障って仕方がなかった。「私、××って思った」といった助詞がない文章は、内容まで薄く感じてしまった。

 ラスト近くでの十枚のはがきのエピソードには深い感動を覚えた。それに隠されていたある秘密もまたしかり、読んでいて何度も涙があふれた。
 年端もゆかぬ弟がこんな心遣いを? と出来すぎな感じは否めないが、それでも彼の優しさには心打たれた。
85点

さらば国分寺書店のオババ

椎名誠(新潮社)

 最初に読んだ時は、心底驚いた、おもしろくて。軽妙でリズミカル。でも今となってはこういう文体にも慣れてしまい、もうごちそうさま、という感じさえする。……と、試合放棄は良くない。

 不機嫌で不親切なバスの運転手の話などは、普遍の面白さがある。
 それから私が感激したのは、シーナ氏もウニに眼がないという話(ウニ好きに悪い人間はいないのだ)。全国ウニ好き友の会々長(嘘)の私としては、シーナ氏にかなり親近感を持った。
70点

和解

志賀直哉(角川書店)

 父親との長年に渡る不和の末に、やっとこさ仲直りできた息子の話。
 '78年に読んだ本。格別印象に残らない作品だったのだが、読み返してみたら、案外よかった。
 でも、父親と和解する以前の話は、やれ腹の底から腹が立っただの、やれこんなこと言われて、不愉快だっただの、そんな文ばかり。しかも生後間もない赤ちゃんが急死したりして、なんとも陰鬱な内容。しかしその後の、子供の誕生、和解成立のシーンなどは、なかなかの出来栄えだと思う(何様じゃ)。
 出産に立ち会う場面では、はじめは「醜い妻を見たくない」なんてほざいていたが、いざ生まれてみれば「醜いものは一つもなかった。……すべては美しかった」。
 ったく、たわけ者め。
65点

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