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女神

三島由紀夫(新潮社)

 世にも美しい妻をめとった男は、実は極端なエゴイストだった。妻が顔にひどい火傷を負った途端、関心ゼロになってしまう。その後、彼は興味の対象を娘へと移し、今度は娘に自分の価値観を押し付けていく。

 たとえば娘と食事をするシーン。食前酒のオーダーは、洋服の色と同じ色のカクテルを頼みなさい、と彼は進言する。私だったら余計なお世話、である。
 やがて娘は条件の揃った美男子と婚約して、父親である彼も御満悦だったのだが……。ラスト近く、妻が見事に復讐を遂げるところでは胸のすく思いがした。
75点
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GOTH リストカット事件

乙一(角川書店)

 連作短編集。
 僕とクラスメートの森野夜は、共通する習性で繋がっていた。人間の持つどす黒い残酷性に、興味を惹かれる習性である。

 いろいろなタイプの「異常者」が登場するのだが、みな一様に落ち着いていて、決して快楽的ではない。淡々と自分がしたいことをこなしてゆく……たとえ殺人であっても。そんな雰囲気である。
 その独特の静けさが、逆に彼らの禍々しさを際立たせてもいる。
 早く続きが読みたいと思わせる筆者の腕は素晴らしいが、ただ単行本に「あとがき」を書くのはいかがなものか。潔さが足りなくはないだろうか。
 私は、執筆活動の裏話を、こういう形で読みたくはない。
80点

ソロモンの犬

道尾秀介(文藝春秋社)

 大学生・秋内の目の前で、知り合いの少年がトラックにはねられる。少年が連れていた犬が、暴走して道路に飛び出したせいで。なぜ犬は暴走したのか?

 読了後、嫌な予感がしてこの作品に関する書評をいくつか読んだ。褒めているものが多かった。けれど正直に書こう、私にはつまらなかった。
 まず思ったのは、秋内が過剰にうぶだということ。微笑ましいを通り越してイライラした。
 ストーリーもいただけない。犬の暴走が少年の命を奪う、その設定がまず受け容れがたかった。しかもその暴走の原因を作った人物は、事実を隠蔽するために、ある男性を殺そうと企む。男性が、その事実に気付く かもしれないから、 という理由から。かもって。その軽さに唖然とした。
60点

死にぞこないの青

乙一(幻冬舎)

 小学五年生のマサオは、新しく担任になった男性教師に目の敵にされ、クラスのみんなからも蔑まれるようになる。
 日々悩むマサオは、あるとき顔が真っ青な男の子を見掛けるようになる。他の誰にも見えていないらしい「アオ」。マサオを見つめるアオの正体とは。

 人格の破綻している教師。エスカレートしてゆくクラスメート。物語がどこへ着地するのか、固唾をのんで読み進めた。
 常に緊張を強いられるマサオの恐怖が、切々と伝わってきた。
 文章はマサオの一人称で書かれているのだが、時として小学生らしからぬ単語が出てくる。その理由は、あとがきに明記されているので、そこまで読めば誰しも納得できるだろう。
75点

シャドウ

道尾秀介(東京創元社)

 母親を癌で亡くした凰介は、父親と二人暮らしとなる。その直後、幼なじみの亜紀の母親が自殺を遂げ、亜紀も交通事故に遭う。次々に起きる事件に、小学五年生の凰介は混乱するが……。

 読みやすくて分かりやすくてどんどん読めてしまったが、読了したとき引っ掛かる点がいくつかあった。
 凰介がときどき見る幻覚のようなものが描かれていたが、これは必要なエピソードだろうか。記憶とは曖昧なものだという意味で入れられた話であろうが、あまりにも思わせぶりというか、大げさ過ぎる気がした。
 終盤の屋上での事件にも疑問が残った。その夜、偶然にも「そこに居合わせた」? 偶然にもほどがあるだろう。
70点

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