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よしなしごとども 書きつくるなり
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雫井脩介(双葉社)

 「日本クライム文学賞」を取った待居。その受賞作は映画化されることとなった。監督は鬼才と称される、脚本家・小野川。彼は独自の感性で、一時期有名になった自殺サイトの話を映画に盛り込もうとする。待居はそんな彼を不快に思うが……。

 誰が主人公というわけでもなく話が進んでいくので、全体的に冗長な感じを受けた。特に小野川はアクが強くて強引な性格なので、彼が出てくると余計話がくどくなる。
 と、前・中盤はいまいちだったが、終盤の畳み掛けるような展開はスリリングで良かった。雫井氏の本領は終盤で発揮される……彼の作品を三冊読んで確信した。
70点
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雫井脩介(双葉社)

 幼い男の子を狙った連続殺人事件が起きる。警察の捜査は行き詰まり、ついにテレビ局を巻き込んだ、史上初の劇場型捜査が動き出す。

 警察小説というと、登場人物が把握しづらいのが常だが、これは違う。利己的な植草。人情家の津田。実直で頼れる本田。それぞれが確固たるキャラクターを持っているので、自然と頭に入ってくる。
 ストーリーも実に分かりやすく、大きなどんでん返しなどは無いものの、すいすい読めて気持ちが良かった。
 スピード感あふれる終盤の展開もすばらしく、まさにページを繰る手ももどかしいほどだった。

 難点を挙げるならば、話し言葉の頭に、よく「えー、」と付いているのが引っ掛かった。リアルさを出すためかもしれないが、鬱陶しいだけである。
95点
雫井脩介(幻冬舎)

 殺人事件の裁判で、裁判官の梶間は、被告人である武内に無罪を言い渡した。
 二年後、退官した梶間は大学教授となっていたが、彼の家の隣に武内が越して来た。紳士然とした武内に、梶間の家族も好意を持つ。しかしいろいろな事件が武内を巡って起こりはじめ、不穏な空気が漂いだす。

 久々に手に汗握るサスペンスを読んだ。武内という男の謎が謎のまま終盤までなだれ込むので、緊張感を持ったまま、読み進むことができた。
 無駄な描写……電球の交換で苛立つシーンなど……も多少あるが、複雑な構成ではないのでテンポは良い。
 ラストもそつがなく、単なる勧善懲悪になっていないところがまた素晴らしい。
95点
篠田節子(文藝春秋社)

 脳に障害を持つ由希は、桁外れの音楽的才能を持っていた。彼女にチェロを教えることを依頼された東野は、自分の能力を超える由希の才能に、嫉妬とも羨望ともつかぬ感情を持つようになる。
 やがて彼女の演奏は、有名チェリストのそれと酷似していき、マスコミも騒ぎ始める……。

 およそ人間的な情緒を持たない由希の行動は、ときに冷徹で容赦がない。そんな彼女に、自尊心を傷付けられながらも、最後まで寄り添っていた東野の執念に戦慄をおぼえた。
 そうまでして到達したい高みに音楽の真髄があるのだろうか。そら恐ろしくなってしまった。

 余談ですが。
 この作品は中谷美紀主演でドラマ化された。彼女の演技は由希のイメージにぴったりで、素晴らしかったと思う。
80点
篠田節子(文藝春秋社)

 埼玉県のとある市で、時期はずれの日本脳炎が流行する。しかも従来のウィルスとはタイプが違う。これは何者かによってばら撒かれた生物兵器なのか?

 役所の職員、医者、看護婦が、それぞれの視点で物語を作っていくので、話が重複したりしてちょっと冗長な印象を受けた。
 でも、だからこそ起こりゆく事象はとても現実味を帯びている。認めない病院、動けない役所、動かない厚生省……あらら、現実にもこんなことがあったような。こういうのは小説の中だけにして欲しいものである。
75点
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