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直感サバンナ

ゲッツ板谷(角川書店)

 イカレた父、ヤバい弟を家族に持った男の、面白エッセイ集。
 くだらない話がてんこ盛りで、頭を空っぽにして読むには最適な作品かもしれない。

 そんな中にあって、異色だったのが「額縁の裏に……」という話。実話らしいのだが、これは怖い。こんな事実、知りたくなかった。記憶から消せたらどんなに良いだろう。
 と、こんなふうに書くと、気になるから立ち読みしてでもそこを読もうと思われるかたもいらっしゃるかとは思うが……止めておいたほうが良い、絶対。
60点
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ファザーファッカー

内田春菊(文藝春秋社)

 自伝という事実に言葉を失った。この悲惨さは、柳美里か、内田春菊か。
 まるで傷付くためにあるような毎日。徹底的に利己主義の実母、鬼畜のような養父。そんな両親でも、子供は頼って生きていかなくてはならないという、閉塞感を突きつけられた。
 ウチも暴力、暴言は日常茶飯事だった。そして、そういう生活を送ることによって、私には人間不信な部分ができ、漠然とした焦燥感を、確かに植えつけられてしまった。
 そんなこんなで読んでいて非常に苦しかったが、作り事ではないという迫力にぐいぐい押されて一気に読了した。
 しかしながら、こういう親って立派な犯罪者だと思う。家族だからといって罪に問われないというのは理不尽だ。
60点

小池真理子(早川書房)

 「雛子」のような女性、実在するだろうか。いないでしょうね。自由奔放で、その行動は欲望の赴くまま。そして夫である信太郎もそんな妻を認め、愛し、喜びを感じていた。でも二人は一人の男の出現によって引き裂かれる……その男とは電気屋の店員。ここで私はのけぞった。いや、電気屋の店員が悪いというつもりはないが、雛子が選ぶ相手としてはいかにも不釣合いに感じられたのだ。

 ラスト、マルメロの木の話が良い。救われた気分になった。
70点

小泉八雲集

小泉八雲(新潮社)

 短編集。たくさんの短編が収められている。
 幼い頃に読んだり聞いたりした、いわゆる怪談話は、ほとんどこの本に収められていた。
 有名な『耳なし芳一のはなし』を始めとして、茶碗の中に誰かの顔が見えるという『茶碗の中』、斬首刑にされる罪人の意趣そらしをする『かけひき』など、今読んでも面白い話ばかりである。

 小泉八雲は本名ラフカディオ・ハーン、言うまでもないことだが生粋の日本人ではない。本文中、体重はポンド、距離はヤードで記されているところが、いかにもそれを感じさせた。
80点

蟹工船・党生活者

小林多喜二(新潮社)

 オホーツク海で操業する蟹工船。元農夫、坑夫、学生などの乗組員は、過酷な労働を強いられていた。死と隣り合わせの毎日を生きるうち、彼らは次第に団結してサボタージュを行うようになり……。

 船底にある「棚」が乗組員たちの寝床だ。シラミや南京虫があふれ、悪臭ただよう不衛生極まりないそれを、彼らは糞壺と呼んでいた。昼は長時間労働、夜は糞壺。彼らがやがて立ち上がりストライキを起こすのも、むべなるかなであったろう。
 虫けらのように殺される運命なら一矢報いたい……彼らの叫びは搾取される側の共通した叫びだと思った。
 もう一つの中編「党生活者」も共産主義者を描いたスリリングな一編であった。

 筆者は左翼文学運動をして逮捕され、警察の拷問によって殺されたそうだ。言論の自由もへちまも無かった時代に、命を賭して作品を書いていた筆者の気迫が感じられる一冊であった。
65点

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