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冷たい密室と博士たち

森博嗣(講談社)

 ある大学の研究施設で、殺人事件が起きる。現場は完全な密室。偶然現場に居合わせた犀川助教授と大学生の萌絵。彼女が事件の謎を解こうと必死になるのを、犀川は苦々しく思っていた。やがて次の事件が起こり、萌絵は生命の危機に晒されるが……。

 「すべてがFになる」を読んだときはかなり面食らったが、こちらの第二作のほうは、多少読み易くなったような気がした。登場人物たちの特異なキャラクターに慣れただけかもしれないが。
 密室の謎については(たぶん)完璧な説明がなされていたが、私のように理解できずとも悲観することはない、と思う。所詮、作家が都合のいいように作った世界なのだから(負け惜しみ)。
75点
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すべてがFになる

森博嗣(講談社)

 単純に、ただ面白かった、では済まされない作品らしい。いろんな趣味嗜好の人々の琴線に、あるいは逆鱗に触れてしまう作品のようだ。
 「ガンダム系」という表現が出てくる。それから、頭脳明晰、美人でしかもお嬢様の萌絵。そして、タイトル、本文中に散りばめられたコンピュータ用語。
 「鼻につく」という方もいるだろう。「好き。ハマる」という方もいるだろう。私はどちらでもないが、ひとこと言うなら「よくできてるな」であった。
75点

抱きしめる、東京~町とわたし

森まゆみ(講談社)

 1954年に生まれた筆者が、移ろい行く「東京」を、自分の生活に絡めて描いたエッセイ。
 私より少し上の世代だが、幼い日に見たこと、したことは結構共通することがある。紙製の着せ替え人形、コンクリート製のごみ箱……ノスタルジイを感じる。
 ただ附属高、早大(東大は二次で落ちた)と進んでいくあたりは、自分の賢さをひけらかさないように、そーっと書いている感じがした。
 「なんだ、苦労知らずのお嬢様かい」って思われたくないのか……なんて邪推かしら。
55点

新釈 走れメロス

森見登美彦(祥伝社)

 『走れメロス』他四編が収められた短編集。

 『藪の中』が一番良かった。芥川龍之介の作品を、現代ふうにアレンジしたもの。
 筆者いわく、原典の「木に縛り付けられて傍観するしかなかった夫の苦悩」に惹かれたのだそうだ。
 「夫」は、森見版でいうと「鵜山」にあたると思われるが、彼は苦悩するどころか、傍観者という立場をむしろ楽しんでいる。燃えるような嫉妬心に身をゆだね、自虐的なふるまいでもって自分の存在を確認していくのが彼流なのだ。
 原典の、切った張ったの激しさこそないものの、恋愛感情の中に潜む残酷性をうまく捉えた作品であると思った。
70点

太陽の塔

森見登美彦(新潮社)

 大学五回生の「私」は、自分を袖にした女性をつけまわしていた。「私」いわく、それは決してストーカー行為ではなく、あくまで研究なのであった……妄想と自意識でぱんぱんに膨れ上がった「私」の、とほほな日常。

 たとえ京大生でも、イケてないとこんなに切ない日々を生きなければならないのかと、単純に驚いてしまった。
 しかも類は友を呼ぶというか「私」の友人たちのダメダメっぷりといったら。でもそれが憎めないというか、声援のひとつも送りたくなるような人たちではあったが。

 「太陽の塔」に関する考察(?)も面白かった。私はそれを見たことがないのだが、大いなる違和感とやらを一度は味わってみたくなった。
75点

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