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よしなしごとども 書きつくるなり
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村上春樹(講談社)

 売れましたね、この本。確かにおもしろい。タフで普通の緑、もろくて危なっかしい直子。このコントラストが良い。きっと男性は直子タイプに弱いんだろう、と予想しながら読んだらやはりそうだった。

 感心したのは数々の挿話。筆者の作品は、いつもこの挿話にオリジナリティがあって上手いと思う。
 ピアノを教えていた美少女が自分で服を破って「あの人(女性)に乱暴された」と嘘をつく話。こんなことありえないと思う反面、こういう悪魔的な人間はいるかもしれないとも思う。筆者のテクニックに感服した。
85点
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村上龍(幻冬舎)

 13歳のための、好奇心の対象別職業案内。
 いわゆる専門職の紹介が多いせいか、聞いたこともない職業がけっこうあった。それを読むだけでもとても興味深かったが、筆者と交流のある「プロ」の逸話が、ひときわ面白かった。坂本龍一、コッポラ監督と、名立たる天才たちの振る舞いは、やはりひと味ちがうのであった。
 しかしながら、筆者が書いていることは所詮絵空事というか、理想論であるような気がした。サラリーマンやOLを選択肢から外せ、というのはかなり厳しい意見なのではないだろうか。

 初めから夢を捨てたような人生はつまらないかもしれない。でも特別な才能が無い人間はごまんといるのである。
 あるかないかの才能に縛り付けられて、人生を棒に振るか。地味でもサラリーマンとしての仕事を全うするか。後者を選んだとて、何ら恥じることはないはずである。
70点
村上龍(講談社)

 落ちぶれた音楽プロデューサーの男が主人公。ふとしたことで、天才的な演技力を持つトラックドライバーのジュンコと出逢う。彼は彼女の映画が撮りたいと、痛切に願うようになる。

 面白くないとは言わないが、人に勧められるような本ではない、作者の毒気に当てられるというか、それにとても読みにくい、こんなふうに句読点がヘンだし、誰かのセリフが長々といつ果てるとも知れないように続くし。
 と、まねして書いてみたが、こういう文体って書く側は楽だ、ということに気付いた。
 筆者はどうやら、美人、金持ち、権力者、あるいはセンスの良い人間しか認めていないようだ。いちいち「……ベンチに座ってホカ弁を食べるようなブスOL」なんて表現する必要はないと思うのだが。他にたとえようはないのか。
45点
村田喜代子(朝日新聞出版)

 文章を書くのは難しい。自分の書いたものは、どこかヘンな気がする、具体的に説明できないけれど、どこかが。そんな私のための、貴方のための一冊。
 「あ! そういうことか!」と思わず膝を打つようなことがたくさん書かれていた。

 まず『そろーりと始めよう』。エッセイの書き出しで、いきなり情報過多にしないこと。
 「昨年の五月十五日、十坪ほどの家の庭で、隣の佐藤さんから譲り受けた深紅のバラが三十輪も一斉に咲いた。」
 これは良くない。読者がついていけなくなる。

 それから、女性の文章に多いという「~とのこと」。
 「娘に給食の献立をきくと、カレーが出たとのことだった。」
 読んでいていかにも舌足らずな感じがする。言葉をはしょらずに書くと
 「娘に給食の献立をきくと、カレーが出たと教えてくれた。」
 となる。
 文章が明確になり、座りがよくなった。
 こんなふうにちょっとしたことだけれど大事なことが、この本には詰まっている。
80点
村田喜代子(文藝春秋社)

 文庫本に「傑作短編集」と書かれているが、看板に偽りなしであった。
 日常の中で見落としてしまうであろう「ちょっと変」をあぶり出すのが、筆者は上手だ。

 封筒ののりしろを舐めて「こんなこと、好き」という男。
 入院中の有沢さんは、毎日医師に思い出話をしに行くが、前日話したことは忘れている。
 「もうすぐ死ぬ」と40年近く言い続けて死んだ、90歳の祖母。

 少しのズレが、おかしみを、あるいは怖さを生む。その最たる作品が「茸類」。
 美枝の従妹・康江は椎茸農家だが、収穫時期にケガをしてしまい、美枝が助っ人に借り出される。
 マムシが出るという草むら。死んだ木にしか育たないキノコ。匕首のように鋭く澄んだ焼酎……。何かを暗示するような言葉が続き、最後に禍々しい事実が明らかとなる。
 人が、ふっと常軌を逸する瞬間が、鮮やかに描かれている。
75点
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