村田喜代子(文藝春秋社)
文庫本に「傑作短編集」と書かれているが、看板に偽りなしであった。
日常の中で見落としてしまうであろう「ちょっと変」をあぶり出すのが、筆者は上手だ。
封筒ののりしろを舐めて「こんなこと、好き」という男。
入院中の有沢さんは、毎日医師に思い出話をしに行くが、前日話したことは忘れている。
「もうすぐ死ぬ」と40年近く言い続けて死んだ、90歳の祖母。
少しのズレが、おかしみを、あるいは怖さを生む。その最たる作品が「茸類」。
美枝の従妹・康江は椎茸農家だが、収穫時期にケガをしてしまい、美枝が助っ人に借り出される。
マムシが出るという草むら。死んだ木にしか育たないキノコ。匕首のように鋭く澄んだ焼酎……。何かを暗示するような言葉が続き、最後に禍々しい事実が明らかとなる。
人が、ふっと常軌を逸する瞬間が、鮮やかに描かれている。
75点
文庫本に「傑作短編集」と書かれているが、看板に偽りなしであった。
日常の中で見落としてしまうであろう「ちょっと変」をあぶり出すのが、筆者は上手だ。
封筒ののりしろを舐めて「こんなこと、好き」という男。
入院中の有沢さんは、毎日医師に思い出話をしに行くが、前日話したことは忘れている。
「もうすぐ死ぬ」と40年近く言い続けて死んだ、90歳の祖母。
少しのズレが、おかしみを、あるいは怖さを生む。その最たる作品が「茸類」。
美枝の従妹・康江は椎茸農家だが、収穫時期にケガをしてしまい、美枝が助っ人に借り出される。
マムシが出るという草むら。死んだ木にしか育たないキノコ。匕首のように鋭く澄んだ焼酎……。何かを暗示するような言葉が続き、最後に禍々しい事実が明らかとなる。
人が、ふっと常軌を逸する瞬間が、鮮やかに描かれている。
75点
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