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よしなしごとども 書きつくるなり
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丸谷才一(文藝春秋社)

 三つの短編が収められている。
 表題作より『鈍感な青年』のほうが読みやすかった。
 とある図書館に通う、大学生の男と女。二人はやがて親しくなり、男性は女性を部屋へと誘う。冗談でかわそうとする彼女だったが……。

 二人のやりとりがとても微笑ましい。
 危険はないかと尋ねる女性に「それはやはり、ある」とはにかみながら答える男性。
 拒絶したり、取り入ったり、落胆したり、舞い上がったり。部屋へたどり着くまでの二人の揺れ動く感情が、短い会話の中にきっちりと描かれている。
 ただ、ベッドでの描写がかなり生々しくて……特に匂いの描写……そこに居合わせてその匂いを嗅いだような気分になってしまった。
80点
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三浦綾子(新潮社)

 主人公の男が乗っていた汽車がブレーキの故障で制御不能に陥る。彼は自らの身体で汽車を止めようと決意する。

 実話に基づく小説らしい。その事実に、さらに感動を深めた。
 主人公はクリスチャンなのだが、半端ではない信仰心を持っている。いつも質素に暮らし、本物の博愛主義者。世にはびこるエセ宗教家も、この小説を読んで、顔を洗って出なおして来いと言いたくなる。
 私はばりばりの無宗教だが、これ読むとキリスト教だけは信じてもいいような気がしてくる。主人公の生き方は尊敬に値する。
80点
三浦しをん(光文社)

 大手出版会社である玄武書房で、新しい辞書を編纂することになる。もうすぐ定年の荒木、元営業マンの馬締、軽薄な西岡……それぞれの思いをのせて、辞書は形になってゆく……。

 本屋大賞受賞、堂々のベストセラーということで、かなり期待して読んだ。確かに面白い。おそらくほとんどの人が知らない「辞書づくり」の世界が興味深いし、馬締氏の恋のゆくえも気にかかる。
 がしかし。何か、そぐわない感じがずっとして、読んでいて落ち着かなかった。それは著者の作風が軽いせいかもしれない。辞書という重々しい世界を、わざと軽やかに描いたのかもしれないが、違和感だけが残った。
 同じ題材で、たとえば小川洋子氏あたりが書いたらどんなふうになるだろう。正直、そっちのほうが読んでみたい。
70点
三浦しをん(新潮社)

 とある大学の教授である村川。彼はかなりの浮気者であった。彼を巡る人々が織り成す物語……連作短編集。

 村川は最後まで登場せず、他者の口から彼の言動が語られる。その不在が、逆に彼の性質を見事に浮かび上がらせる。
 おそらくは飄々と浮気をしていた村川。周囲のものだけが騒ぎ、うろたえ、憎悪をつのらせる。そのあまりの温度差に驚くばかりであった。
 三浦氏の作品はエッセイしか読んだことがなかったが、こんなにきちんとした文章を読ませてくれるとは思っていなかった。短くて素っ気ない表現のなかに、心に沁み入る珠玉の部分がたくさんあった。
90点
三浦しをん(光文社)

 ウェブマガジンに連載していたエッセイをまとめたのが本書。
 この言い回し、言葉使い、エッセイ系のヒットサイトでよく見かける。ある種、パターンとして定着しているのであろうか。
 とにかく、軽くて辛口で、面白い。

 私が気に入ったのは「恋横車生花実成上」、「動かざること山の如し」、と「女の友情」の出だし。
 あとは漫画に関する話が多くて「女の友情」も後半はほとんど理解不能だった。そういう、内輪ネタのような部分を読むのが少し辛かった。
70点
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