Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
ホワイトカラーの道楽
前川やく(有限会社鉤屋)
ごく普通のサラリーマン、前川氏の書き下ろしエッセイ。
前川氏のサイト「スレッジハンマーウェブ」(2005年閉鎖)も非常に面白いのだが、この本もまた、私のツボにぐりぐりとはまった一冊であった。
「この世に並んでまで食うほどのものはない」とか「ホキ徳田のホキって?」とか「『萩の月』ならぬ『荻の月』ってのを見た」とか、本当に果てしなく面白かった。
文章も落ち着いていて読みやすく、静かで皮肉な調子がすっかり気に入ってしまった。
採点なし
ごく普通のサラリーマン、前川氏の書き下ろしエッセイ。
前川氏のサイト「スレッジハンマーウェブ」(2005年閉鎖)も非常に面白いのだが、この本もまた、私のツボにぐりぐりとはまった一冊であった。
「この世に並んでまで食うほどのものはない」とか「ホキ徳田のホキって?」とか「『萩の月』ならぬ『荻の月』ってのを見た」とか、本当に果てしなく面白かった。
文章も落ち着いていて読みやすく、静かで皮肉な調子がすっかり気に入ってしまった。
採点なし
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かのこちゃんとマドレーヌ夫人
万城目学(筑摩書房)
小学一年生のかのこちゃん。彼女の家に居ついている猫のマドレーヌ夫人。一人と一匹の視点で描かれた、愉快でちょっと悲しい物語。
初めて著者の作品を読んだが、とてもとても面白かった。あまりの面白さに他の著作を読むのが怖くなった、失望するのが怖いというか。
かのこちゃんの描き方が、まず良い。友だちになりたい子に、なかなか近付けないもどかしさ。難しい言葉を覚えては、使ってみたくてうずうずする気持ち。子どものなかにある、そんな微妙な心情を鮮やかに描き出している。
マドレーヌ夫人と、柴犬の玄三郎のやりとりも良い。夫婦(そう、二匹は紛れも無く夫婦なのだ)としての優しさに満ち溢れている。
終盤では悲しい事件が立て続けに起こるが、でも、それぞれの事件のしっぽには……陳腐な言葉だけれど……希望がぶら下がっているような気がして、明るい気分で読了できた。
95点
小学一年生のかのこちゃん。彼女の家に居ついている猫のマドレーヌ夫人。一人と一匹の視点で描かれた、愉快でちょっと悲しい物語。
初めて著者の作品を読んだが、とてもとても面白かった。あまりの面白さに他の著作を読むのが怖くなった、失望するのが怖いというか。
かのこちゃんの描き方が、まず良い。友だちになりたい子に、なかなか近付けないもどかしさ。難しい言葉を覚えては、使ってみたくてうずうずする気持ち。子どものなかにある、そんな微妙な心情を鮮やかに描き出している。
マドレーヌ夫人と、柴犬の玄三郎のやりとりも良い。夫婦(そう、二匹は紛れも無く夫婦なのだ)としての優しさに満ち溢れている。
終盤では悲しい事件が立て続けに起こるが、でも、それぞれの事件のしっぽには……陳腐な言葉だけれど……希望がぶら下がっているような気がして、明るい気分で読了できた。
95点
告白
町田康(中央公論新社)
河内の国の片田舎に生まれた熊太郎は、長ずるにしたがって極道者と成り果てていく。飲む打つ買うの日々ではあったが、彼にはそうなる理由があった。少年の頃に犯した罪が彼をがんじがらめにしていたのだ。どうせいつか捕まる身、まじめに生きるのは馬鹿らしい……やがて彼はとんでもない事件を起こす。
「思弁的」という言葉を私は寡聞にして知らなかったが、熊太郎は自分をそう位置づける。思考と言葉が一致せず、考えているうちに何も言えなくなってしまう彼。
誰しもそういうことはあると思うのだが、彼は自分だけが特別だと思っている。そのへんに彼の思い上がりというか、勘違いというか、敗因があったと思う。
ラストで、熊太郎が自分の核心部分に触れるシーンの描写は迫力があった。心の奥底にあったものは……あぁやっぱり、というのが私の率直な感想であった。
85点
河内の国の片田舎に生まれた熊太郎は、長ずるにしたがって極道者と成り果てていく。飲む打つ買うの日々ではあったが、彼にはそうなる理由があった。少年の頃に犯した罪が彼をがんじがらめにしていたのだ。どうせいつか捕まる身、まじめに生きるのは馬鹿らしい……やがて彼はとんでもない事件を起こす。
「思弁的」という言葉を私は寡聞にして知らなかったが、熊太郎は自分をそう位置づける。思考と言葉が一致せず、考えているうちに何も言えなくなってしまう彼。
誰しもそういうことはあると思うのだが、彼は自分だけが特別だと思っている。そのへんに彼の思い上がりというか、勘違いというか、敗因があったと思う。
ラストで、熊太郎が自分の核心部分に触れるシーンの描写は迫力があった。心の奥底にあったものは……あぁやっぱり、というのが私の率直な感想であった。
85点
耳そぎ饅頭
町田康(講談社)
エッセイ集。
独特の文体ゆえ、理解不能な部分もあった。そして虚実のあいまいな部分も。だがそんなことを気にせずに読んでいくと、するっと分かってくる(あるいは分かった気にさせてくれる)。
「地獄の快男児」。ファストフード店でフライドポテトの処理に困る筆者。いらない。けど捨てられない。しねしねと芋を食う筆者。くだらなくも面白い。
全体的に筆者は朝令暮改、そのポリシーのなさはかえってすがすがしい。
65点
エッセイ集。
独特の文体ゆえ、理解不能な部分もあった。そして虚実のあいまいな部分も。だがそんなことを気にせずに読んでいくと、するっと分かってくる(あるいは分かった気にさせてくれる)。
「地獄の快男児」。ファストフード店でフライドポテトの処理に困る筆者。いらない。けど捨てられない。しねしねと芋を食う筆者。くだらなくも面白い。
全体的に筆者は朝令暮改、そのポリシーのなさはかえってすがすがしい。
65点
巨人の磯
松本清張(新潮社)
五つの短編が収められているが、表題作『巨人の磯』が面白かった。
茨城の大洗海岸。死後二週間と目される膨張した死体が漂着する。捜査線上に一人の男が浮かぶが、彼にはアリバイがあった。そこにはどんなトリックが?
私事であるが、大洗といえば海水浴にも行ったことがある。また、被害者の別荘があるという五浦海岸もよく知っている場所である。それらのことが相まって、まるで現実に起きた事件のように、興味深く本書を読んだ。
もちろんストーリーも良かった。次々に謎を読者に広げて見せ、最後の最後ですぱっと事件を解決する……清張らしい、引き締まった短編であった。
75点
五つの短編が収められているが、表題作『巨人の磯』が面白かった。
茨城の大洗海岸。死後二週間と目される膨張した死体が漂着する。捜査線上に一人の男が浮かぶが、彼にはアリバイがあった。そこにはどんなトリックが?
私事であるが、大洗といえば海水浴にも行ったことがある。また、被害者の別荘があるという五浦海岸もよく知っている場所である。それらのことが相まって、まるで現実に起きた事件のように、興味深く本書を読んだ。
もちろんストーリーも良かった。次々に謎を読者に広げて見せ、最後の最後ですぱっと事件を解決する……清張らしい、引き締まった短編であった。
75点
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