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よしなしごとども 書きつくるなり
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万城目学(筑摩書房)

 小学一年生のかのこちゃん。彼女の家に居ついている猫のマドレーヌ夫人。一人と一匹の視点で描かれた、愉快でちょっと悲しい物語。

 初めて著者の作品を読んだが、とてもとても面白かった。あまりの面白さに他の著作を読むのが怖くなった、失望するのが怖いというか。
 かのこちゃんの描き方が、まず良い。友だちになりたい子に、なかなか近付けないもどかしさ。難しい言葉を覚えては、使ってみたくてうずうずする気持ち。子どものなかにある、そんな微妙な心情を鮮やかに描き出している。
 マドレーヌ夫人と、柴犬の玄三郎のやりとりも良い。夫婦(そう、二匹は紛れも無く夫婦なのだ)としての優しさに満ち溢れている。
 終盤では悲しい事件が立て続けに起こるが、でも、それぞれの事件のしっぽには……陳腐な言葉だけれど……希望がぶら下がっているような気がして、明るい気分で読了できた。
95点
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町田康(中央公論新社)

 河内の国の片田舎に生まれた熊太郎は、長ずるにしたがって極道者と成り果てていく。飲む打つ買うの日々ではあったが、彼にはそうなる理由があった。少年の頃に犯した罪が彼をがんじがらめにしていたのだ。どうせいつか捕まる身、まじめに生きるのは馬鹿らしい……やがて彼はとんでもない事件を起こす。

 「思弁的」という言葉を私は寡聞にして知らなかったが、熊太郎は自分をそう位置づける。思考と言葉が一致せず、考えているうちに何も言えなくなってしまう彼。
 誰しもそういうことはあると思うのだが、彼は自分だけが特別だと思っている。そのへんに彼の思い上がりというか、勘違いというか、敗因があったと思う。
 ラストで、熊太郎が自分の核心部分に触れるシーンの描写は迫力があった。心の奥底にあったものは……あぁやっぱり、というのが私の率直な感想であった。
85点
町田康(講談社)

 エッセイ集。
 独特の文体ゆえ、理解不能な部分もあった。そして虚実のあいまいな部分も。だがそんなことを気にせずに読んでいくと、するっと分かってくる(あるいは分かった気にさせてくれる)。

 「地獄の快男児」。ファストフード店でフライドポテトの処理に困る筆者。いらない。けど捨てられない。しねしねと芋を食う筆者。くだらなくも面白い。
 全体的に筆者は朝令暮改、そのポリシーのなさはかえってすがすがしい。
65点
松本清張(新潮社)

 五つの短編が収められているが、表題作『巨人の磯』が面白かった。
 茨城の大洗海岸。死後二週間と目される膨張した死体が漂着する。捜査線上に一人の男が浮かぶが、彼にはアリバイがあった。そこにはどんなトリックが?

 私事であるが、大洗といえば海水浴にも行ったことがある。また、被害者の別荘があるという五浦海岸もよく知っている場所である。それらのことが相まって、まるで現実に起きた事件のように、興味深く本書を読んだ。
 もちろんストーリーも良かった。次々に謎を読者に広げて見せ、最後の最後ですぱっと事件を解決する……清張らしい、引き締まった短編であった。
75点
松本清張(角川書店)

 主人公である「桐子」の執念深さに怖気を震った。
 自分の兄が無実の罪で刑務所に入り、それを助けるべく有名な弁護士に弁護を依頼する。でも断わられる。で、兄は獄死する。
 そこからの彼女は弁護士への復讐のためだけに生きているように感じられる。そのエネルギーだけが彼女を突き動かし、ある意味彼女の「生きがい」となってしまったようだ。
 これを読むと、人間の持っているパワーの中で一番強力なのは「憎しみ」なのかと思えてくる。
80点
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