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よしなしごとども 書きつくるなり
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角田光代(幻冬舎)

 一人暮しの「私」の部屋に、夏休み中の弟がやってくる。弟は東京にいる彼女に会いに来たと言うが、どうも様子がおかしい。

 タイトルはいけ好かない感じがしたが、内容は気に入った。若い作者だが、会話や比喩に浮ついた感じがなくて好感度大。「……ぽてぽてとジュース売り場まで歩いていく」なんて表現も私好み。
 登場人物はみんな少しづつ変で、唯一マトモなのかと思った「私」も、いきなり「……私は恭一と寝た」。そこだけが生々しくて、全然ストーリーにそぐわない感じがした。
75点
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金井美恵子(朝日新聞社)

 『小春日和』の続編。
 あれから10年経って30歳になった桃子。定職にもつかず、一人でのんびりと暮らし、その強靭さにはさらに磨きがかかったようだ。一方花子は勤めていた会社を辞めて、桃子と同じアパートに引越ししてきた。
 そして二人は……はて。
 と考えてしまうほど、ただ何となく過ぎ去ってゆく日々を描いているだけなのだが、それがいちいち面白いのである。こんな毒にも薬にもならないような話、面白がるのは何だか悔しいのだけれど。
 それから桃子の隣人の岡崎さんが、めっぽう俗っぽくて良い。アパートに一人はいそうな人物である。
80点
金井美恵子(河出書房新社)

 小説家のおばさんの家に居候する、大学生の桃子。父親は同性愛者だし、友人の花子は自分のことを「おれ」なんて言うし、大学へは何となく行きたくないし……気ままに過ごす、彼女の日常を描く。

 長いセンテンスが少し鬱陶しいが、桃子のだらりとした気分を表現するには、効果的だ。
 とにかく彼女は生意気で、小賢しくて、強い。誰にも調子を合わせず、気に入った子とだけ付き合う。彼女のような強さが自分にもあったら、私もこんな学生になりたかった。
 私は文庫版で読んだが、装丁や、特別な活字も内容に合っている。それから三島由紀夫の「女神」の話が出てくるのだが、私も印象に残っている場面の話だったので、うれしくなってしまった。
85点
加納朋子(講談社)

 とびぬけて美しく、明るかった高校生の麻衣子が、通り魔によって殺害されてしまう。彼女のクラスメート、その親、先生が、事件の謎を解き明かしてゆく、連作短編集。

 各々の作品が微妙に重なり合い、まとまっていく展開がうまい。
 タイトルの「ガラスの麒麟」とは、麻衣子が書いていた小説のタイトルでもある。繊細で壊れやすい心を、ガラスでできた麒麟に見立てた小説。そんな解釈が繰り返し描かれている。
 だが、殺されてしまった麻衣子に鞭打つようだが、どうしても彼女には反感を覚えてしまう。
 両親が離婚しかかっているという悩みはあったかもしれないが、気まぐれに周囲の人間を振り回す彼女の生き方は肯定し難い。傷付き具合まで自分本位だと思えてしまった。
65点
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