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縁切り神社

田口ランディ(幻冬舎)

 短編集。どれもこれも最後の二、三行部分で鼻の奥がつんとした。
 特に気に入ったのは「縁切り神社」。これは実在の神社? 誰かと縁を切りたい、あるいは誰かと誰かの縁を切って欲しい、そんな絵馬がたくさんぶら下がっている風景。
 「人の悪意に触れると体は重くなる」という表現が出てくるが、非常に共感できる。ネット上の荒れてる掲示板なぞ、読んでいるだけで、毛穴がひとつづつふさがれていくような圧迫感を感じるものである。

 逆にイマイチだったのは「エイプリルフールの女」。本妻の葬式を見に行く愛人という設定自体が、すでに嫌だ。こういう明らかに立場をわきまえない女は、何を語っても聞く耳持たんぞ、私は。
75点
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小指のいたみ

渡辺淳一(文藝春秋社)

 短編集。駅のキオスクで買って、出張先までの車中で読むサラリーマン……読者層はそのあたりか。

 「酔いどれ天使」。飲み出したら止まらない克彦。妻が妊娠四ヵ月のとき、友人から「酩酊児」の話を聞き、不安に襲われる……。
 オチは効いているが、なんともイヤな話だ。妻の人間性を疑ってしまった。

 「乳房切断」。乳がんと診断され、片方の乳房を切断した女性。数年後、それは誤診であったことがわかる。
 因果応報がテーマだろうか。それにしても犯した「罪」よりも受けた「罰」のほうがはるかに重い気がするが。
60点

コンセント

田口ランディ(幻冬舎)

 本の帯に「村上龍氏絶賛!」と書いてあるが、私も同感である。おもしろ過ぎる。価値ある1500円・税別。今、興奮冷め遣らぬままに書いてるから乱筆乱文お許し下され。
 こういう作品は読み終わるのが悲しくなる。加えて「まさかつまらないラストじゃないでしょうね」と構えていたら、ラストも「おおー、こう来たか」と大満足。

 内容は、奇妙な死に方をした兄について、その妹がいろいろ調べていくうちに、自分が特殊な人間であることに気付く。いるはずのない人間を見たり、ガンに侵されている人の死臭を嗅ぎ取ったり。で自分はコンセント・プラグ・やっぱりコンセントなんだ!って理解する。
 あーもうまどろっこしい。とにかく誰彼の見境なく推薦したい一冊である。
95点

どこから行っても遠い町

川上弘美(新潮社)

 東京の、小さな商店街。そこをゆきかう人々を描いた連作短編小説集。
 それぞれの話が少しずつリンクしていて、ひとつの事件が違った視点で語られるのが興味を惹いた。
 特に、最後の『ゆるく巻くかたつむりの殻』は、幾つかの話の中で語られていた女性が、自らの思いを独白するという形になっており、まさに大団円、物語がぎゅっと収束する感じがとても心地よかった。

 ラストで彼女が死生観を語る部分は、圧巻だった。連綿と続く人と人とのつながり、記憶のつながりが、自分をずっと生かしてゆくのだという。
 死してなお漠々と自分の「かけら」が在り続ける……なんて空恐ろしい、しかし同時になんて甘美な考え方であろうか。
95点

高校生のための文章読本

筑摩書房

 「高校生のための」とタイトルにはあるが、けっこう内容は難しい(私のレベルが低いということもある)。70おさめられている随筆、短文はさほど難解ではないが、別冊になっている「表現への扉」が難しいのだ。
 というわけで、本文を鑑賞するだけでも「あり」だと勝手に断定。

 野坂昭如・著「火垂るの墓」、K・チャペック「園芸家12カ月」など、以前読んで惹かれた作品はやはり抜粋でも面白く、初めて読んで、全部を読みたくなったものもいくつかあった。
 読書案内、興味を引き出すという意味でも、本書は良書といえるだろう。
70点

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