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よしなしごとども 書きつくるなり
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藤沢周(講談社)

 自分が殺した女の部屋にとどまる主人公。食事を作ってみたり、妄想に耽ってみたり。その行動には、どんな意味があるのか?無いのか?……無い。で私の感想は終わってしまいそうである。

 作者はタイトル通り「ソロ」(ひとり・単独)にこだわっているようだが、私のような凡人には理解不能である。
 主人公の視点でしか語られていないので、彼が何者なのか……単なる殺人鬼、人格破綻者……疑問は放り出されたまま。
 とにかく、とりあえず、わけわかりません。
15点
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米原万里(文藝春秋社)

 エッセイ集。
 「不実な美女か……」は楽しく読んだが、2冊目にして早くも食傷気味。
 理由を考えたが、同じ話題が何度か出てくるせいかもしれない。初出一覧によると、いろいろなところに書いたものを集めたようなので、それも無理からぬことか。
 もちろん面白い話もたくさんあった。12歳くらいで文芸大作を次々に読破したのは、単に濡れ場を読みたかったから、とか。昨今の本屋には、雑誌と受験参考書と漫画しか置いてなくて薄気味悪い、とか。
 そのあたりはうんうん頷きながら読むことができた。
60点
藤沢周平(文藝春秋社)

 15歳の少年藩士・文四郎。剣術に非凡な才能を持つ彼は、数々の苦難を乗り越え、凛々しく成長していく。

 毛嫌いしていた時代小説を初めて読んだが、これはすばらしい。
 まず、主人公の礼儀正しい立ち居振る舞いが清々しく、この荒んだ現代からみるととても新鮮なのだ。
 また彼の剣の稽古仲間である逸平、与之助の二人も友情に篤く、人間味にあふれていて、いい。
 ストーリーも起伏があって飽きさせない。特に終盤の、斬り合いとなって文四郎が刀を振るうシーン、淡い恋心を抱いていたおふくとの逢瀬のシーンなどは、鳥肌が立つほど面白かった。
95点
小川洋子(集英社)

 エッセイ集。
 『博士の愛した数式』にからめた数学の話が面白かった。
 「素数とは1と自分自身以外では割り切れない自然数である……(中略)分解されることを拒み、常に自分自身であり続け、美しさと引き換えに孤独を背負ったもの。それが素数だ。」
 素数がそんなにも特別な数字だったなんて、単純に驚いた。
 私は昭和×年11月1日生まれであるが、全部素数だ、どおりで美しくて孤独なんだ、と思ったら「1」は素数では無かった。詰めが甘かった。
 冗談はさておき。
 『罵られ箱』も良かった。落ち込んだときは無理に前向きにならず、駄目な自分を再確認するそうだ。ネガティブな私にも真似できそうな処世術だ。
70点
米原万里(徳間書店)

 日露同時通訳者である筆者のエッセイ。
 通訳ってすごいなぁと常々思っていたが、すごい上に大変でもあるらしい。ある時は原子力の会議、そしてまたある時はボリショイバレエのプリマのインタビュー、そうかと思えば「旧石器時代のなんたらかんたら」のシンポジウム、と実に多種多様な専門用語を駆使しなければならないのだから。
 誤訳のエピソード、名訳の紹介、各国の慣用句など、興味深い話がいっぱいで飽きさせない。
70点
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