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墨東綺譚

永井荷風(新潮社)

 時折小説を書いたりして、気ままに生活していた大江氏。
 彼が街を散策していたあるとき、お雪という女性と出会う。彼女は娼婦だったが、溌剌として美しい女性だった。

 大江氏の淡々とした自分勝手な生き方が、なぜだか憎めない。お雪を「ミューズ」と評しながらも、彼女に言い寄られそうになると途端に逃げ腰になる。本当は彼は女性不信なのだ。それをうだうだと言い訳する様に、苦笑してしまった。
 また、昭和初期の人々の生活ぶりがいろいろと描かれている。威張り散らす巡査、ラディオから流れる浪花節、初冬の落ち葉焚き。私は長ったらしい背景描写は苦手だが、この作品のそれは楽しんで読むことができた。

 ※題名の1文字目は、本当はさんずいのついた「墨(ぼく)」です。
65点
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グロテスク

桐野夏生(文藝春秋社)

 スイス人と日本人の混血児である「わたし」とユリコ。凡庸な「わたし」と絶世の美少女ユリコは互いを憎悪し合う。
 やがて二人は、とある一流学園の生徒となり、和恵とミツルという少女たちと出会う。四人の人生は、交錯しながら次第に奈落の底へと落ちてゆく……。

 なんてタイトルどおりの作品なのだろう。主人公の四人が四様の異常さで迫ってくるのだ。
 まず主な語り手である「わたし」。彼女は悪意のかたまりのような人間で、その話を信用していいのかどうか分からないような仕掛けになっている。
 娼婦となったユリコと和恵の手記もまた凄まじい。人はどこまで堕ちることができるのか、競い合っているかのようだ。

 起承転、まで面白く読んだが、結がよくない。この部分は不必要な気がしたのだが、すべてが過剰なこの作品、最後まで「行き過ぎ」感を出したのかもしれない。
80点

庭ができました

銀色夏生(角川書店)

 著者が昔住んでいた土地に家を建て、庭を造った。その一年にわたる、庭が出来ていく過程の写真集。

 300坪という広大な土地。好きな木はすべて植えたという木々。花、石、ガーデンファニチャー、屋根つきの渡り廊下、デカいガレージと倉庫……その庭の第一印象は「いったいいくら掛かったのだろう?」であった。
 ここまですごいと嫉妬心は湧いてこず、ただ驚くばかりであった。
 この奔放でだだっ広い庭が、今現在どうなっているのか気になるところである。
60点

隣人

永井するみ(双葉社)

 六つの短編集。癖のない文章で、さらりと読みやすい。
 内容的には、ほとんどの話が「殺人」に必然性がないような気がした。簡単に言うなら「何も、殺さんでも」である。
 だが筆者はそれが言いたかったのかもしれない。犯人にしてみれば充分な理由があり、それは他人には理解されなくてもかまわない、ということだ。
 最後の「雪模様」が一番はらはらした。幼い子供は手にかけないで欲しい、とやはり思ってしまう。
70点

k.m.p.のぐるぐるなきもち箱。

なかがわみどり・ムラマツエリコ(三笠書房)

 楽して金儲けしたい。誰だってそう思うけど、そうは問屋が卸さないのが現実ってもの。でもこの二人の作者は、それを実現するべくk(金).m(儲け).p(プロジェクト)を始めた。こういう本も、その活動の一環なのだそう。

 内容は、格言集のような、つぶやきのような。心に響いたのは、人間嫌いについてのコトバ。ほんとは愛されたいくせに、でも無理っぽいから「そんなのいらない」って言ってない? という意味の部分。あうう、そうかもしれない。
65点

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