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そして殺人者は野に放たれる

日垣隆(新潮社)

 刑法39条「心神喪失者の行為は、罰しない」
 この一文を盾に、悪意の犯罪者が罪を償うことなく娑婆に出てくる恐怖……。

 文庫本の帯にこうある。「無罪判決」その時、殺人者はニヤリと笑った。
 売らんかなの惹句かと思ったら、どうやら事実らしい。
 80年の新宿バス放火殺人事件、82年の深川通り魔殺人事件の両被告は、判決の瞬間に笑ったというのだ。精神異常者のふりをすれば刑を免れる、まさにしてやったりの笑顔。恐ろし過ぎる。
 また飲酒や覚せい剤による酩酊状態で罪を犯したときは、心神耗弱とみなされて刑が軽減されるという。加重ではなく軽減? まったく信じ難いことである。
 一刻も早くこのような悪法を改正し、少しでも被害者が救われるようにして欲しいものである。
70点
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リング

鈴木光司(角川書店)

 日本のホラー界もこの本くらいから活気が出てきたように感じられた。その後でた本は「リング」より怖いとか、「リング」を凌ぐとかそんな広告を見かけるようになったから、やはり引き合いに出されるということは、面白いということの証明であろう。
 この作品で最も吸引力があったのはその設定ではないだろうか。ビデオを見たら死ぬという、この設定が上手いと思う。そんなばかなと思いながらも、リアリティのある文章に惹きこまれた。
85点

黒笑小説

東野圭吾(集英社)

 短編集。『臨界家族』が良かった。
 哲也の四歳になる娘・優美は、あるアニメが大好き。それのキャラクターグッズをおねだりしては親を困らせていた。次々に売り出される新商品、哲也は買うことを拒否するが……。

 こんなに親の気持ちが痛いほど分かるテーマも珍しいかも。安易におもちゃを買い与えたくはない。でも周りがみんな持っているのに、ウチの子だけが持っていないという状況はつら過ぎる。そんな親心を徹底的にリサーチする企業。これはノンフィクションかもしれない、と思ってしまった。
 その他、鳴かず飛ばずの作家の悲哀を描いた作品がいくつかあったが、いずれももうひとひねり欲しい内容であった。筒井康隆氏ほどの毒もなく、かといって星新一氏ほどの軽やかさもなく、中途半端な印象。
65点

図書館の神様

瀬尾まいこ(マガジンハウス)

 主人公の清(きよ)は、赴任先の高校で文芸部の顧問になった。興味もヤル気もない清だったが、たったひとりの部員である垣内君と接しているうち、次第に何かが変わり始めるのだった……。

 前半、清の苦い思い出話が語られる。高校生のとき、部活仲間だった女の子を自殺に追いやったこと。この部分を読んだだけで、私はたまらない気分になった。清のような、脳みそ筋肉な人間が、心の底から嫌いだからだ。
 そして講師になってからの清もいだたけない。不倫の恋をする彼女。それ自体は否定しないが、相手の男性がいけない。利己的な、ただの優柔不断男なのである。こんな男性に魅力を感じるなんて信じ難い。
 主人公の悪口はこれくらいにして……垣内君が素直でユニークな性格なので、その点だけが面白く読めた。
60点

白夜行

東野圭吾(集英社)

 1973年、大阪で質屋の主人が殺される。事件は迷宮入りとなり、19年という歳月が経つ。被害者の息子・亮司と、容疑者の一人であった女性の娘・雪穂。成長した二人の周りでは、怪しい事件が次々に起きるが……。

 主人公の二人が、心情をほとんど語らないという珍しい手法が採られている。そのせいか、読了してもよく分からない部分が多々あった。なぜ殺さなければならなかったのか、なぜレイプまでする必要があったのか。この二つだけでも本人の口から説明して欲しかった。
 さらに最大の謎は、亮司が雪穂のためにここまで出来たのはなぜかということである。二人の間に愛情があったのかどうかも記述されていないので、亮司の想いの重さが量れず、読んでいて困惑した。

 この長さを飽きさせずに読ませる筆力はさすがとしか言いようがないが、余計なエピソードを盛り込みすぎのような気もした。
70点

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