京極夏彦(角川書店)
同心・又左衛門の娘であるお岩は、気高く強い女性であった。彼女は疱瘡を患い、二目と見られぬほどに顔が崩れてしまったが、それを気に病むでもなく凛として生きていた。
そんな彼女のもとへ、浪人・伊右衛門が婿入りすることとなった。結婚したふたりは、ぎこちなく日々の生活を営んでゆくが、次第に感情がすれ違い……。
お馴染みの四谷怪談とは、だいぶ趣きが異なるストーリーである。伊右衛門は邪悪でも女好きでもなく、お岩も確固たる自我を持っている。ふたりは、同じように真っ直ぐで不器用なもの同士として描かれている。
対して脇役陣は、腹に一物のある者ばかり。特に伊東喜兵衛という男は、血も涙もないまさに悪鬼のような人間で、彼が最後どのように描かれるのか、作家は彼を懲らしめてくれるのか、固唾を呑んで読んだ。
終盤の「御行の又市」「嗤う伊右衛門」の章が素晴らしい。伊右衛門は嬉しい時はたいそう嬉しげに嗤うのだ……。
85点
同心・又左衛門の娘であるお岩は、気高く強い女性であった。彼女は疱瘡を患い、二目と見られぬほどに顔が崩れてしまったが、それを気に病むでもなく凛として生きていた。
そんな彼女のもとへ、浪人・伊右衛門が婿入りすることとなった。結婚したふたりは、ぎこちなく日々の生活を営んでゆくが、次第に感情がすれ違い……。
お馴染みの四谷怪談とは、だいぶ趣きが異なるストーリーである。伊右衛門は邪悪でも女好きでもなく、お岩も確固たる自我を持っている。ふたりは、同じように真っ直ぐで不器用なもの同士として描かれている。
対して脇役陣は、腹に一物のある者ばかり。特に伊東喜兵衛という男は、血も涙もないまさに悪鬼のような人間で、彼が最後どのように描かれるのか、作家は彼を懲らしめてくれるのか、固唾を呑んで読んだ。
終盤の「御行の又市」「嗤う伊右衛門」の章が素晴らしい。伊右衛門は嬉しい時はたいそう嬉しげに嗤うのだ……。
85点
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