中野翠(文藝春秋社)
書評のコラム集。を読んで書評を書くというのもどうかと思うが……ま、いいか。
こういうのを読むと、褒めコトバより貶しコトバのほうが、断然おもしろいことに今更ながら気付く。でもそれは私の性格が悪いだけかもしれませんが。
いろんな本のいろんな引用文があるが、特に気に入ったものをここにさらに引用したい。斎藤緑雨の「緑雨警語」より。「それがどうした。ただこの一句に、大方の議論は果てぬべきものなり。政治といわず文学と言わず」
60点
書評のコラム集。を読んで書評を書くというのもどうかと思うが……ま、いいか。
こういうのを読むと、褒めコトバより貶しコトバのほうが、断然おもしろいことに今更ながら気付く。でもそれは私の性格が悪いだけかもしれませんが。
いろんな本のいろんな引用文があるが、特に気に入ったものをここにさらに引用したい。斎藤緑雨の「緑雨警語」より。「それがどうした。ただこの一句に、大方の議論は果てぬべきものなり。政治といわず文学と言わず」
60点
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村上春樹、佐々木マキ(講談社)
その日「ぼく」は、いつもの図書館に本を探しに行った。図書館には、見たこともなかった地階が存在し、そこには謎めいた老人がいた。
老人は「ぼく」が探していた本を貸してくれたが「ここで読んでいけ」と迫るのだった……。
何ともかわいらしい本である。ほぼ文庫本サイズの単行本で、表紙は厚みがあってふわふわと柔らかく、羊男のイラスト入り外箱つき。中身も半分はイラストで、それが内容と非常にマッチしていて、ムードを盛り上げている。
ストーリーはちょっと怖くて、悲しくて、そして何よりドーナッツが食べたくなるのが特徴である。
75点
その日「ぼく」は、いつもの図書館に本を探しに行った。図書館には、見たこともなかった地階が存在し、そこには謎めいた老人がいた。
老人は「ぼく」が探していた本を貸してくれたが「ここで読んでいけ」と迫るのだった……。
何ともかわいらしい本である。ほぼ文庫本サイズの単行本で、表紙は厚みがあってふわふわと柔らかく、羊男のイラスト入り外箱つき。中身も半分はイラストで、それが内容と非常にマッチしていて、ムードを盛り上げている。
ストーリーはちょっと怖くて、悲しくて、そして何よりドーナッツが食べたくなるのが特徴である。
75点
群ようこ(角川書店)
私もその昔、何が何でもアメリカへ行って永住するつもりだった。アメリカに行けばどうにかなる、と信じ込んでいた。
この本の作者も似たようなことを考えて渡米、それにまつわるエッセイが本書である。
しかしながら、アメリカ女性というのはキョーレツ。明るくて朗らかで大らかで、なんてことはないのである。人の陰口言いまくり、自慢話しまくり。とにかくパワフル。読んでいる分にはおもしろいけど、実際相手にした日にゃあ、きっとげっそりだと思う。
70点
私もその昔、何が何でもアメリカへ行って永住するつもりだった。アメリカに行けばどうにかなる、と信じ込んでいた。
この本の作者も似たようなことを考えて渡米、それにまつわるエッセイが本書である。
しかしながら、アメリカ女性というのはキョーレツ。明るくて朗らかで大らかで、なんてことはないのである。人の陰口言いまくり、自慢話しまくり。とにかくパワフル。読んでいる分にはおもしろいけど、実際相手にした日にゃあ、きっとげっそりだと思う。
70点
中村文則(新潮社)
27歳の「私」は、タクシーの運転手。毎日を持て余し、幼い頃の被虐体験を思い出しては、そこにどんな意味があったのかを探ろうとするのだが……。
独り言を言ったり、現実と妄想の区別が出来なかったり、主人公はかなり危ない状態にあるようだ。読み進むにつれ、彼の狂気にじわじわと絡め取られるような気がしてきて、読むのを投げ出したくなるほどだった。
主人公の心に平穏が訪れないまま、物語は終盤へと流れていく。しかしラストシーンで彼がつぶやく言葉……「親はいません。今の僕には、もう、関係ないんです」……には、一筋の光明を見た気がした。後ろばかり見ていても仕方がない、前進するしかない、という彼の決心を感じた。
55点
27歳の「私」は、タクシーの運転手。毎日を持て余し、幼い頃の被虐体験を思い出しては、そこにどんな意味があったのかを探ろうとするのだが……。
独り言を言ったり、現実と妄想の区別が出来なかったり、主人公はかなり危ない状態にあるようだ。読み進むにつれ、彼の狂気にじわじわと絡め取られるような気がしてきて、読むのを投げ出したくなるほどだった。
主人公の心に平穏が訪れないまま、物語は終盤へと流れていく。しかしラストシーンで彼がつぶやく言葉……「親はいません。今の僕には、もう、関係ないんです」……には、一筋の光明を見た気がした。後ろばかり見ていても仕方がない、前進するしかない、という彼の決心を感じた。
55点
村上春樹(新潮社)
15歳の誕生日に、家出をした少年。彼は四国へと向かう。一方、中野区に住む、不思議な老人ナカタさんも、西を目指して旅をすることになる。
やがて二人の時間は交錯しあい、生と死の混沌とした世界が垣間見えてくる。
いつもながら、リアルな脇役陣がストーリーに深みを与えている。特に、ナカタさんと一緒に旅することになった星野さんが良い。俗物でありながら、心根は素直で温かい。少年が知り合った大島さんの薀蓄もまた、聞き応えがある。
だが、肝心の主役である少年が、私にはどうにも作り物っぽく思えた。あまりにも博識で、あまりにも老成している。
15歳のような30歳はいるかもしれないが、この少年のような、30歳のような15歳はいるはずがない。ナカタさんと少年の話が交互に進んでいくのだが、少年の章を読むのが次第に苦痛になってきたほどだった。
ただ、そんなマイナス部分を補って余りあるほど、魅力のあるストーリーではあった。変な悪ふざけをしてる部分を除けば、神秘的で美しい作品である。
85点
15歳の誕生日に、家出をした少年。彼は四国へと向かう。一方、中野区に住む、不思議な老人ナカタさんも、西を目指して旅をすることになる。
やがて二人の時間は交錯しあい、生と死の混沌とした世界が垣間見えてくる。
いつもながら、リアルな脇役陣がストーリーに深みを与えている。特に、ナカタさんと一緒に旅することになった星野さんが良い。俗物でありながら、心根は素直で温かい。少年が知り合った大島さんの薀蓄もまた、聞き応えがある。
だが、肝心の主役である少年が、私にはどうにも作り物っぽく思えた。あまりにも博識で、あまりにも老成している。
15歳のような30歳はいるかもしれないが、この少年のような、30歳のような15歳はいるはずがない。ナカタさんと少年の話が交互に進んでいくのだが、少年の章を読むのが次第に苦痛になってきたほどだった。
ただ、そんなマイナス部分を補って余りあるほど、魅力のあるストーリーではあった。変な悪ふざけをしてる部分を除けば、神秘的で美しい作品である。
85点