Back To The Past
よしなしごとども 書きつくるなり
閉鎖病棟
帚木蓬生(新潮社)
つい最近まで名前すら知らなかった作家だが、読ませる読ませる。出だしの部分、脈絡のない話が続いて疑問に思ったが、後になってそれは効果的な伏線だったとわかる。
ニュース等で殺人犯が「誰かの声に命令されてやった」と供述している、なんて話をたまに聞くが、私はそのたびに不審に思っていた。
が、この本を読んで、その言い分を少しは信じる気になった。精神を病んでゆくってのはこういうことなのね……と納得させられた。
大団円の裁判の部分が、泣かせる。チュウさんの善良な性格が際立つ。こういう救いのあるラストは、読後感も爽やかで良いと思う。
85点
つい最近まで名前すら知らなかった作家だが、読ませる読ませる。出だしの部分、脈絡のない話が続いて疑問に思ったが、後になってそれは効果的な伏線だったとわかる。
ニュース等で殺人犯が「誰かの声に命令されてやった」と供述している、なんて話をたまに聞くが、私はそのたびに不審に思っていた。
が、この本を読んで、その言い分を少しは信じる気になった。精神を病んでゆくってのはこういうことなのね……と納得させられた。
大団円の裁判の部分が、泣かせる。チュウさんの善良な性格が際立つ。こういう救いのあるラストは、読後感も爽やかで良いと思う。
85点
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四〇九号室の患者
綾辻行人(森田塾出版)
自動車事故で大けがをした「わたし」は、記憶を失って精神科病棟に入院を余儀なくされていた。
やがて少しずつ記憶が戻りはじめるが、それはおぞましい殺人の記憶だった……。
作者は21歳のときに、この作品の草稿をしたためたそうだ。なるほど、文章が少々青臭い。ラストのどんでんがえしも、私でさえ予想がついた。
きっとこの作品は、綾辻氏のファンだったら楽しめるのではないだろうか。例えて言うなら、今ではすっかり成功した画家の、若かりし頃のラフスケッチを見せてもらったような、そんな感覚だろうか。
60点
自動車事故で大けがをした「わたし」は、記憶を失って精神科病棟に入院を余儀なくされていた。
やがて少しずつ記憶が戻りはじめるが、それはおぞましい殺人の記憶だった……。
作者は21歳のときに、この作品の草稿をしたためたそうだ。なるほど、文章が少々青臭い。ラストのどんでんがえしも、私でさえ予想がついた。
きっとこの作品は、綾辻氏のファンだったら楽しめるのではないだろうか。例えて言うなら、今ではすっかり成功した画家の、若かりし頃のラフスケッチを見せてもらったような、そんな感覚だろうか。
60点
僕の双子の妹たち
白石公子(集英社)
郵便局に勤める直毅。彼には、実のりと穂のかという双子の妹がいた。不倫の恋に苦しむ実のり。専門学校を辞めて、小劇団に入りたいという穂のか。
事故死した両親に代わって、妹たちを守りたいと思う直毅だが、自らの恋愛問題に思い悩む日々であった……。
途中までは、とても面白く読むことができた。が、直毅が茜と葉子という二人の女性に、同時に好意を持つあたりから、俄然いやなムードが漂いはじめた。ん? もしかして? こいつ女々しいだけのやつ?
それはやがて確信に変わった。こっちがダメならあっちの女。寂しさや苦しさから逃れるためだけに、女性を利用するとは、見下げ果てたヤツだ。
だいたい、妹たちに対する感情が、兄弟愛を超えてやしまいか。そう考えると、タイトルさえ不気味に思えてくる。
60点
郵便局に勤める直毅。彼には、実のりと穂のかという双子の妹がいた。不倫の恋に苦しむ実のり。専門学校を辞めて、小劇団に入りたいという穂のか。
事故死した両親に代わって、妹たちを守りたいと思う直毅だが、自らの恋愛問題に思い悩む日々であった……。
途中までは、とても面白く読むことができた。が、直毅が茜と葉子という二人の女性に、同時に好意を持つあたりから、俄然いやなムードが漂いはじめた。ん? もしかして? こいつ女々しいだけのやつ?
それはやがて確信に変わった。こっちがダメならあっちの女。寂しさや苦しさから逃れるためだけに、女性を利用するとは、見下げ果てたヤツだ。
だいたい、妹たちに対する感情が、兄弟愛を超えてやしまいか。そう考えると、タイトルさえ不気味に思えてくる。
60点
葡萄物語
林真理子(集英社)
34歳の映子は、結婚して六年になるが、子供に恵まれない。夫は優しい人ではあるが、平凡な生活に、ふと不安がよぎることがある。
「このまま、片田舎で年を取ってゆくだけなのだろうか」と。
そんなある日、彼女は東京の出版社に勤める渡辺という男性と出会う。やがて二人は惹かれあい……。
既婚の同年代の女性なら、誰しも映子のような思いに囚われることはあると思う。もう異性からは相手にされない、そんな焦り、悲しみ。
そして不倫をする女性の誰しも、自分のケースだけは不倫などという猥雑な言葉でくくって欲しくないと考えるような気がする。
映子は、いわば女性たちの、そんな想いを代弁してくれているのかもしれない。ただ、終盤はありがちな展開で、工夫が足りないと思った。
65点
34歳の映子は、結婚して六年になるが、子供に恵まれない。夫は優しい人ではあるが、平凡な生活に、ふと不安がよぎることがある。
「このまま、片田舎で年を取ってゆくだけなのだろうか」と。
そんなある日、彼女は東京の出版社に勤める渡辺という男性と出会う。やがて二人は惹かれあい……。
既婚の同年代の女性なら、誰しも映子のような思いに囚われることはあると思う。もう異性からは相手にされない、そんな焦り、悲しみ。
そして不倫をする女性の誰しも、自分のケースだけは不倫などという猥雑な言葉でくくって欲しくないと考えるような気がする。
映子は、いわば女性たちの、そんな想いを代弁してくれているのかもしれない。ただ、終盤はありがちな展開で、工夫が足りないと思った。
65点
コスメティック
林真理子(小学館)
30代になったばかりの沙美は、広告代理店から化粧品会社のPR担当に転身する。そこで彼女は自らの才能を開花させ、次々に困難を乗り越えてゆく。
主人公が仕事にのめり込んで、無難な彼との結婚さえ蹴ってしまうところなどが痛快であった。
だが、化粧品業界のどす黒い内幕や、身勝手な男たちの言い草や、読んでいてあまり愉快でない部分が多かった。
主人公の沙美も、高慢ちきで計算高く、知り合いにはなりたくないタイプである。
50点
30代になったばかりの沙美は、広告代理店から化粧品会社のPR担当に転身する。そこで彼女は自らの才能を開花させ、次々に困難を乗り越えてゆく。
主人公が仕事にのめり込んで、無難な彼との結婚さえ蹴ってしまうところなどが痛快であった。
だが、化粧品業界のどす黒い内幕や、身勝手な男たちの言い草や、読んでいてあまり愉快でない部分が多かった。
主人公の沙美も、高慢ちきで計算高く、知り合いにはなりたくないタイプである。
50点
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