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告白

町田康(中央公論新社)

 河内の国の片田舎に生まれた熊太郎は、長ずるにしたがって極道者と成り果てていく。飲む打つ買うの日々ではあったが、彼にはそうなる理由があった。少年の頃に犯した罪が彼をがんじがらめにしていたのだ。どうせいつか捕まる身、まじめに生きるのは馬鹿らしい……やがて彼はとんでもない事件を起こす。

 「思弁的」という言葉を私は寡聞にして知らなかったが、熊太郎は自分をそう位置づける。思考と言葉が一致せず、考えているうちに何も言えなくなってしまう彼。
 誰しもそういうことはあると思うのだが、彼は自分だけが特別だと思っている。そのへんに彼の思い上がりというか、勘違いというか、敗因があったと思う。
 ラストで、熊太郎が自分の核心部分に触れるシーンの描写は迫力があった。心の奥底にあったものは……あぁやっぱり、というのが私の率直な感想であった。
85点
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水辺のゆりかご

柳美里(角川書店)

 後味悪し。ディティールが……石鹸にへばりつくナメクジとか、ミスすると脇腹をつねるピアノ教師とか、枚挙にいとまがない。ぴか一は友人の父親に性的いたずらをされるシーン。私も自慢できるような家庭で育たなかったので、こういう大人達のどす黒い醜さを目にしてしまったクチである。だから読んでいて胸がムカムカした。
 子供だと思ってなめんなよ、理解できないフリしててやるけどさ……子供にそんなふうに思わせる大人は最低である。
75点

職人を泣かせて建てた300年住める家

荻原博子(角川書店)

 建材には向かないとされるクリの木を使って、木造軸組工法で家を建てた筆者の奮闘記。

 自分も家を建てる前にこの本に出会っていれば……とほぞを噛んだ。こじゃれた洋風建築に目を奪われ、和風と聞いただけで毛嫌いしていた自分がどんなにマヌケだったか思い知らされた。
 ただ、どんなに頑張っても、この筆者のマネはできないと思う。第一に豊富なコネ。こういう家造りは人脈がものをいう。それと金。ふた言目には「手が出ない」と言いつつ、かなりな資金力である。
 あまりに恵まれていて、苦労話も自慢話に思えてくる。次第に不快感が募る話ではある。
70点

耳そぎ饅頭

町田康(講談社)

 エッセイ集。
 独特の文体ゆえ、理解不能な部分もあった。そして虚実のあいまいな部分も。だがそんなことを気にせずに読んでいくと、するっと分かってくる(あるいは分かった気にさせてくれる)。

 「地獄の快男児」。ファストフード店でフライドポテトの処理に困る筆者。いらない。けど捨てられない。しねしねと芋を食う筆者。くだらなくも面白い。
 全体的に筆者は朝令暮改、そのポリシーのなさはかえってすがすがしい。
65点

陰陽師

夢枕獏(文藝春秋社)

 ううむ、おれは京極夏彦のあやかしの話をほつほつと思い出したぞ……陰陽師(おんみょうじ)ふうに言うとこうなるか。
 時代小説はほとんど読まないのだが、この本を読んだら、こういうみやびな世界にも興味をそそられた。
 嫋(じょう)と鳴る琵琶の音、ふうわりと身に纏った狩衣(かりぎぬ)。加えて主人公の陽陰師安倍清明は長身で色白、目元は涼しく秀麗な顔。あぁもっと読みたい。ハマってしまいそうな自分がこわい。
80点

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