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夏の災厄

篠田節子(文藝春秋社)

 埼玉県のとある市で、時期はずれの日本脳炎が流行する。しかも従来のウィルスとはタイプが違う。これは何者かによってばら撒かれた生物兵器なのか?

 役所の職員、医者、看護婦が、それぞれの視点で物語を作っていくので、話が重複したりしてちょっと冗長な印象を受けた。
 でも、だからこそ起こりゆく事象はとても現実味を帯びている。認めない病院、動けない役所、動かない厚生省……あらら、現実にもこんなことがあったような。こういうのは小説の中だけにして欲しいものである。
75点
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愛逢い月

篠田節子(集英社)

 短編集。私が気に入ったのは「ピジョン・ブラッド」。
 鳩って私も好きじゃない。けっこう獰猛だし、人の足元まで寄ってきてずうずうしい。少しはスズメを見習え。こっちがちょっと動けばさっと飛び立つ。これが鳥のあるべき姿でしょ。そしてこの本を読むと余計鳩が嫌いになる。ひとんちのベランダに我が物顔で居座って、汚しまくって、挙句の果てに巣まで作って。
 結局鳩の巣作りは成功して、主人公の巣は崩壊したと、こういう訳か。しかも幸せはすぐそこにあったのに……やりきれない。
 鳩も悪いけど、男も悪いと思う。追うと逃げる、逃げれば追ってくる。どっちかにしてくれっての。
70点

未明の家

篠田真由美(講談社)

 ストーリーは建築探偵・桜井京介が、ある女性に別荘の調査を依頼されるところから始まる。そのスパニッシュ・スタイルの別荘で、次々事件が巻き起こり、彼が謎解きをしていく。女性の父親である「灘男」の名前の秘密を解くシーンが「愛」があって良かった。

 しかしながら……読書中、何度も作者が女性であることを確認したくなるほど、男らしい文章。贅肉がないというか、気迫があるというか。それと登場人物がみんな魅力的。京介はもちろん、蒼も深春も気に入った。
80点

天涯の花

宮尾登美子(集英社)

 捨て子だった珠子は、養護施設で育つ。中学を出たとき、剣山に住む宮司の養女となり、人里離れた山奥で生活することとなる。
 数年後、珠子は山で遭難したカメラマンの男を偶然助け、二人はやがて愛し合うようになる。

 ところどころ「この事実が後に珠子を悩ますこととなる」というような前振りがあるため、急かされているような気持ちで読みすすめた。そのへんが上手いというか、あざといというか。
 珠子は恵まれない境遇に育ちながらも、美しく、穢れを知らず、思いやりあふれる女性であった。でも、愛する人が現れた途端、非情ともいえる人間になってしまう。
 その切り替わりが唐突な感じもした。
 乳児と接して、自分も結婚すると決心するあたりも、珠子の人間としての未熟さが見え隠れするようだった。
 いろいろとあげつらってしまったが、この作品は剣山の大自然、とりわけ花の描写が素晴らしく、心が洗われるようだった。
75点

牛への道

宮沢章夫(新潮社)

 二頁前後のエッセイ集。
 筆者は、きっと日常の「くだらないこと」を愛してやまない方なのであろう。
 こんなことをわざわざ書くのもナンですが、書かずにいられないのです……そんな筆者のつぶやきが聞こえてくるような作品集である。
 しかしながら、笑える話、共感できる話と、全然面白くない話、オチがない話の落差がありすぎではある。
75点

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