伊坂幸太郎(双葉社)
星野一彦は二股ならぬ五股をかけていた。そして今、その五人と別れることを、繭美という女に強要されている。彼女は二週間後、一彦をあるバスに乗せるための監視役なのだった……。
五通りの別れは、それぞれに個性的でとても面白く読めた。
そして何といっても物語の中心は、繭美という強烈な女性だ。彼女が物語を引っ掻き回すのが小気味良いったらない。180cm、180Kg、嫌いな言葉は塗りつぶしてある辞書を振りかざす彼女は、本当に異星人のよう。
書き下ろしだという最終章が、特に良かった。
以下、既読のかたにだけ分かる話で申し訳ない。
何度「キックする」と書かれたか、思わず数えませんでしたか?
90点
星野一彦は二股ならぬ五股をかけていた。そして今、その五人と別れることを、繭美という女に強要されている。彼女は二週間後、一彦をあるバスに乗せるための監視役なのだった……。
五通りの別れは、それぞれに個性的でとても面白く読めた。
そして何といっても物語の中心は、繭美という強烈な女性だ。彼女が物語を引っ掻き回すのが小気味良いったらない。180cm、180Kg、嫌いな言葉は塗りつぶしてある辞書を振りかざす彼女は、本当に異星人のよう。
書き下ろしだという最終章が、特に良かった。
以下、既読のかたにだけ分かる話で申し訳ない。
何度「キックする」と書かれたか、思わず数えませんでしたか?
90点
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山田悠介(幻冬舎)
西暦3000年。わがままな国王は、500万人の「佐藤」姓の人間を皆殺しにすることを決めた。7日間にわたる壮絶な鬼ごっこが始まった。
着想は良いかもしれない。だが、あまりにも文章が素人くさくて脱力した。セリフはまるでマンガの世界、これは作品というより作文であろう。
筆者はほとんど本を読んだことがないそうだ。そういう人が書く文章、推して知るべしである。
本を読めば良い文章が書けるというものではないだろう。しかし本を読まずして良い文章は絶対に書けないと私は思う。
15点
西暦3000年。わがままな国王は、500万人の「佐藤」姓の人間を皆殺しにすることを決めた。7日間にわたる壮絶な鬼ごっこが始まった。
着想は良いかもしれない。だが、あまりにも文章が素人くさくて脱力した。セリフはまるでマンガの世界、これは作品というより作文であろう。
筆者はほとんど本を読んだことがないそうだ。そういう人が書く文章、推して知るべしである。
本を読めば良い文章が書けるというものではないだろう。しかし本を読まずして良い文章は絶対に書けないと私は思う。
15点
山本周五郎(新潮社)
短編集。うまい。どれもこれも示唆に富んだ、すばらしい作品ばかりである。金言に満ち溢れている。
歴史の中に埋もれてしまった女性達。名を遺すこともなかった彼女達に光をあてて、賞賛に値する生き方を描きだしている。
つつましく清廉な彼女達は、時代を変える、底知れぬ強さを併せ持っていたのである。
ところで「桃の井戸」という作品のなかで次のような言葉が出てくる。
「あなたはものごとを力んで考え過ぎますよ、もっと気持ちを楽に……」。自分に言われたのかと思った。
85点
短編集。うまい。どれもこれも示唆に富んだ、すばらしい作品ばかりである。金言に満ち溢れている。
歴史の中に埋もれてしまった女性達。名を遺すこともなかった彼女達に光をあてて、賞賛に値する生き方を描きだしている。
つつましく清廉な彼女達は、時代を変える、底知れぬ強さを併せ持っていたのである。
ところで「桃の井戸」という作品のなかで次のような言葉が出てくる。
「あなたはものごとを力んで考え過ぎますよ、もっと気持ちを楽に……」。自分に言われたのかと思った。
85点
伊坂幸太郎(新潮社)
大学生である五人の男女を中心に織り成される、友情、恋愛、事件、そして事故……。
大学生が主人公という設定でまず身構えた。目を背けたくなるような青臭い行動、現実味のないクサいセリフを読まされそう……が、五人は程よく大人で安堵した。
唯一「西嶋」だけは幼稚なところもあったが、憎めない性格というか得難い存在で、彼抜きにはこの小説の面白さは語れないであろう。
世界平和を願って麻雀で「平和(ピンフというらしい)」という役ばかり狙ってみたり。「今そこにある危機」を救うため、動物保護センターから犬をもらってみたり。
行動は突飛だが、彼なりの筋道は通っている。面倒くさいけど正しい存在……西嶋、これからも頑張れ、と言いたくなった。
他の四人も、美しすぎる東堂、念力使いの南、中庸な役どころの北村、お調子者の鳥井、と多彩で、数々のエピソードは具体性を帯び、映像となって目の前に現れるようだった。
90点
大学生である五人の男女を中心に織り成される、友情、恋愛、事件、そして事故……。
大学生が主人公という設定でまず身構えた。目を背けたくなるような青臭い行動、現実味のないクサいセリフを読まされそう……が、五人は程よく大人で安堵した。
唯一「西嶋」だけは幼稚なところもあったが、憎めない性格というか得難い存在で、彼抜きにはこの小説の面白さは語れないであろう。
世界平和を願って麻雀で「平和(ピンフというらしい)」という役ばかり狙ってみたり。「今そこにある危機」を救うため、動物保護センターから犬をもらってみたり。
行動は突飛だが、彼なりの筋道は通っている。面倒くさいけど正しい存在……西嶋、これからも頑張れ、と言いたくなった。
他の四人も、美しすぎる東堂、念力使いの南、中庸な役どころの北村、お調子者の鳥井、と多彩で、数々のエピソードは具体性を帯び、映像となって目の前に現れるようだった。
90点
山本夏彦(新潮社)
雑誌「室内」に連載されていたコラムを集めた短文集。
本作品が単行本として出たのは昭和37年。だが、今読んでも古臭さは感じない。
たとえば、昨今婦女子は出れる、出れないと、ら抜き言葉を使うと嘆じる一節がある。
たとえば、寿司屋で。客を馬鹿にする寿司職人とへつらう客の、主客転倒を観察する一節がある。
それは今現在も人々の口にのぼる話題であろう。
また、思わず苦笑してしまう話もあった。「すべて婦人は、自分を美人の一種だと思っている。すくなくともその一変種だと思っている」などという文章は、まさに言いえて妙である。
65点
雑誌「室内」に連載されていたコラムを集めた短文集。
本作品が単行本として出たのは昭和37年。だが、今読んでも古臭さは感じない。
たとえば、昨今婦女子は出れる、出れないと、ら抜き言葉を使うと嘆じる一節がある。
たとえば、寿司屋で。客を馬鹿にする寿司職人とへつらう客の、主客転倒を観察する一節がある。
それは今現在も人々の口にのぼる話題であろう。
また、思わず苦笑してしまう話もあった。「すべて婦人は、自分を美人の一種だと思っている。すくなくともその一変種だと思っている」などという文章は、まさに言いえて妙である。
65点