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よしなしごとども 書きつくるなり
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山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第十巻。
 二十七の作品が収められているその中で、どうしたってこれを紹介しなければなるまい。
 「うんこ殺人」。
 事故死して、地獄へと来てしまった鏡氏。
 彼の首は胴体の上にはなく、片手に自分の首をぶら下げているというからグロである。
 そして共に地獄に堕ちた妻と、地獄の裁判所で罵りあう。
 その妻はと言えば、首が百八十度回転して、顔の下が背中になっている。加えて内臓が飛び出している娘。
 三人がなぜかうんこまみれなのである。その訳は……。
 何てばかばかしいのだろう。嬉しくなってしまう。痛快無比である。
 その他、近未来を描いたSF色の濃い作品もまた楽しめた。
85点
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山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第二巻。
 七つの短編と長編が一つ収められている。いずれも探偵・荊木歓喜が謎解きをする。
 私が気に入ったのは「女狩」。犯人の動機、あるいは心情と言ってもいいと思うが、それは分かる人にしか分からないものである。
 ネタばれになるので詳細は書けないが……とりあえず私は「分かる」クチである。

 長編の「十三角関係」も手が込んでいて面白い。
 女郎屋の女主人が惨殺され、多数の容疑者が浮かび上がる。
 誰からも慕われ、太陽のように明るかった女主人。しかし、どんな親切もアダになることがある。
 犯人に繋がるヒントをひとつ。病気も怪我も多少は本人にも責任があるが、発狂するほどの悲嘆だけは完全に他人のせいである、という意味の文章が心に突き刺さった。
85点
伊坂幸太郎(集英社)

 小惑星が衝突して、地球は滅亡する。タイムリミットはあと三年。残された日々を懸命に、あるいは仕方なく生きる人々を描いた短編集。

 『太陽のシール』に登場する土屋のエピソードが良かった。七歳になる子どもは重い病気を患っていて、自分が逝ったあとのことが心配だった。でも地球が滅亡すると聞いて気が楽になった、という話。
 人類が全員、例外なく一緒に死ぬということは、とてつもなく恐ろしいことではある。が、いっぽうで「残される人」がいないということが、心を軽くする作用もあるようだ。

 この作品を読んで、「自分だったら?」と考えた。あと三年で地球ごと消滅するとしたら? 呆然として何もできなくなるような気がする。毎日を無為に過ごし、ただただ「地球が滅びませんように」とバカみたいに祈るだけの日々になりそうだ。
70点
山田風太郎(光文社)

 山田風太郎のミステリー傑作選の第一巻。十個の作品が収められている。
 私が気に入ったのは長編「誰にも出来る殺人」。
 ぼろアパートの一室に一冊のノートが残されていた。間借人たちが、彼らに起きた「事件」を次々に書き記したノートであった。
 この手法は面白い。間借人たちのキャラクターが存分に活かされている。次第にノートへの記述が増えていって、間借人たちの恐怖感が連鎖していくさまも説得力がある。
 オチ、というか裏の仕事人は予想がついたが、その正体には面食らった。ホラーっぽい。
80点
伊坂幸太郎(双葉社)

 星野一彦は二股ならぬ五股をかけていた。そして今、その五人と別れることを、繭美という女に強要されている。彼女は二週間後、一彦をあるバスに乗せるための監視役なのだった……。

 五通りの別れは、それぞれに個性的でとても面白く読めた。
 そして何といっても物語の中心は、繭美という強烈な女性だ。彼女が物語を引っ掻き回すのが小気味良いったらない。180cm、180Kg、嫌いな言葉は塗りつぶしてある辞書を振りかざす彼女は、本当に異星人のよう。

 書き下ろしだという最終章が、特に良かった。
 以下、既読のかたにだけ分かる話で申し訳ない。
 何度「キックする」と書かれたか、思わず数えませんでしたか?
90点
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