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よしなしごとども 書きつくるなり
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唯川恵(新潮社)

 これほど予想が的中する作品もめずらしい。読んでいるほうが恥ずかしい。
 途中、こういう描写がある。「女性雑誌のカウンセリングで、恋愛沙汰に疲れ果てた相談を読むことがある。」私もこの作品を読みながら、ずっとそう思っていた。三流女性雑誌の、くだらない恋愛相談話だね、これは。
 こういう本が好きだという方もいらっしゃるとは思うので、これ以上は差し控えるが、読んでいて疲れた、ある意味。
10点
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万城目学(筑摩書房)

 小学一年生のかのこちゃん。彼女の家に居ついている猫のマドレーヌ夫人。一人と一匹の視点で描かれた、愉快でちょっと悲しい物語。

 初めて著者の作品を読んだが、とてもとても面白かった。あまりの面白さに他の著作を読むのが怖くなった、失望するのが怖いというか。
 かのこちゃんの描き方が、まず良い。友だちになりたい子に、なかなか近付けないもどかしさ。難しい言葉を覚えては、使ってみたくてうずうずする気持ち。子どものなかにある、そんな微妙な心情を鮮やかに描き出している。
 マドレーヌ夫人と、柴犬の玄三郎のやりとりも良い。夫婦(そう、二匹は紛れも無く夫婦なのだ)としての優しさに満ち溢れている。
 終盤では悲しい事件が立て続けに起こるが、でも、それぞれの事件のしっぽには……陳腐な言葉だけれど……希望がぶら下がっているような気がして、明るい気分で読了できた。
95点
恩田陸(新潮社)

 ありゃ? って終わり方。すべての謎が解けきってないような。ま、私の読解力の無さがバレてしまいそうなので、これ以上は言いますまい。
 主人公の一人である「小夜子」は、スーパー美少女、頭脳明晰、etc……という設定。これはありがちな設定だが、私はいきなり現実に引き戻されてしまう。だって、そういう子、実際見たためしがない。
 ケチばっかりつけても何なので、良かったところは、講堂での芝居のシーン。怖かった。空気の張り詰め方がうまい。
60点
柳美里(新潮社)

 劇作家である梁秀香。彼女の作品を韓国で上演したいという依頼があって、現地へと向かう秀香。そこで彼女は里花という女性と出会う。里花の顔の中には、一匹の魚が棲んでいるのだった。雑踏を歩けば、あまり良い意味ではないほうの注目を浴びてしまうような魚が。
 こんなに「読まなければ良かった」と思わせる本も珍しい。何も得るものがなく、ただただ暗いばかりの世界である。
 人間のいちばん醜い部分だけを選りすぐって、突きつけられているような気分に陥った。しかも一片のユーモアさえ無い。
 この作品でモデルとなった女性に訴訟を起こされ、改訂してまで出版したかった柳氏という人が恐ろしくなった。
10点
町田康(中央公論新社)

 河内の国の片田舎に生まれた熊太郎は、長ずるにしたがって極道者と成り果てていく。飲む打つ買うの日々ではあったが、彼にはそうなる理由があった。少年の頃に犯した罪が彼をがんじがらめにしていたのだ。どうせいつか捕まる身、まじめに生きるのは馬鹿らしい……やがて彼はとんでもない事件を起こす。

 「思弁的」という言葉を私は寡聞にして知らなかったが、熊太郎は自分をそう位置づける。思考と言葉が一致せず、考えているうちに何も言えなくなってしまう彼。
 誰しもそういうことはあると思うのだが、彼は自分だけが特別だと思っている。そのへんに彼の思い上がりというか、勘違いというか、敗因があったと思う。
 ラストで、熊太郎が自分の核心部分に触れるシーンの描写は迫力があった。心の奥底にあったものは……あぁやっぱり、というのが私の率直な感想であった。
85点
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