宮部みゆき(集英社)
ネット上で擬似家族を演じていた四人。その「おとうさん」が死体となって発見される。警察は残った三人を取調室に呼び、「おとうさん」の実の娘に、三人を面通しさせるが……。
仮想の世界に救いを求める人々。それは決して間違ったことではない。しかし、とこの作品は主張する。仮想世界に逃げ込んで「現実」をあだやおろそかにするなかれ、と。
それから「クロスファイア」の石津刑事、「模倣犯」の武上刑事が登場する。二人が心情を吐露する場面は、両作品を既読の場合のほうが、より心に響くであろう。
ひとつ苦言を呈するなら、一美が携帯電話を使うシーンには疑問を感じた。署内で電話、しないでしょう。
75点
ネット上で擬似家族を演じていた四人。その「おとうさん」が死体となって発見される。警察は残った三人を取調室に呼び、「おとうさん」の実の娘に、三人を面通しさせるが……。
仮想の世界に救いを求める人々。それは決して間違ったことではない。しかし、とこの作品は主張する。仮想世界に逃げ込んで「現実」をあだやおろそかにするなかれ、と。
それから「クロスファイア」の石津刑事、「模倣犯」の武上刑事が登場する。二人が心情を吐露する場面は、両作品を既読の場合のほうが、より心に響くであろう。
ひとつ苦言を呈するなら、一美が携帯電話を使うシーンには疑問を感じた。署内で電話、しないでしょう。
75点
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宮部みゆき(小学館)
公園のゴミ箱から、女性の右腕が発見される。それを皮切りに次々殺人事件が起きる。
上下巻、千四百ページ、しかも二段組、をたったいま読み終えて、ちょっと放心状態です。しかもその長さを感じさせないストーリー。いや、正直に言うと下巻に入ってからは講釈が多くて、ちょっとダレた。
小説のかなり早い段階で、誰が犯人なのかが書かれている。だから読んでいるほうも「危ない、そいつに近付くな」「うわっ、ばか!そんなことやってる場合か」なんて、ハラハラし通し。
そして、宮部氏の作品はいつもそうなのだが、人物描写があまりにリアルで「真一君、元気だしなよ」「ヒロミ、あんただけは許せないぜ」なんて、どっぷりと浸ってしまう。
ラスト近く、タイトルの「模倣犯」が強烈に生きてくるシーンはかなり痛快で、この長編をここまで読んだ者だけが味わえる醍醐味ね、とひとり悦に入ってしまった。
85点
公園のゴミ箱から、女性の右腕が発見される。それを皮切りに次々殺人事件が起きる。
上下巻、千四百ページ、しかも二段組、をたったいま読み終えて、ちょっと放心状態です。しかもその長さを感じさせないストーリー。いや、正直に言うと下巻に入ってからは講釈が多くて、ちょっとダレた。
小説のかなり早い段階で、誰が犯人なのかが書かれている。だから読んでいるほうも「危ない、そいつに近付くな」「うわっ、ばか!そんなことやってる場合か」なんて、ハラハラし通し。
そして、宮部氏の作品はいつもそうなのだが、人物描写があまりにリアルで「真一君、元気だしなよ」「ヒロミ、あんただけは許せないぜ」なんて、どっぷりと浸ってしまう。
ラスト近く、タイトルの「模倣犯」が強烈に生きてくるシーンはかなり痛快で、この長編をここまで読んだ者だけが味わえる醍醐味ね、とひとり悦に入ってしまった。
85点
宮部みゆき(双葉社)
言わずと知れたカード破産の話。「偶然」がひとつのキーワードになっているが、全然無理がない。
舞台設定、人物設定が細部まで考え抜かれていて、傑作だと思う。
印象的だった部分をひとつ。換気扇をガソリンできれいにするという話。そこまでしてきれいにしたい人が世の中にはいるんですね。
90点
言わずと知れたカード破産の話。「偶然」がひとつのキーワードになっているが、全然無理がない。
舞台設定、人物設定が細部まで考え抜かれていて、傑作だと思う。
印象的だった部分をひとつ。換気扇をガソリンできれいにするという話。そこまでしてきれいにしたい人が世の中にはいるんですね。
90点
宮部みゆき(光文社)
「お財布」が語り手となって登場人物の行動が明らかになるという手法。下品な人間はお財布も下品、この辺の設定はうなづける。
でも犯人は……推理小説の掟、犯人は物語の中で主要な登場人物の中にいなければいけない……に抵触しているのでは。その点において、少しだけ違和感があった。
75点
「お財布」が語り手となって登場人物の行動が明らかになるという手法。下品な人間はお財布も下品、この辺の設定はうなづける。
でも犯人は……推理小説の掟、犯人は物語の中で主要な登場人物の中にいなければいけない……に抵触しているのでは。その点において、少しだけ違和感があった。
75点
宮本輝(新潮社)
いろんな内容がぎっしり詰まった、幕の内弁当みたいな小説。まず、往復書簡による文章(これがとても効果的に主人公二人の心情を吐露させている)。他には思い付くままに挙げると、無理心中、十数年後の再会、障害を持つ子供、モーツアルトの流れる喫茶店、スーパーの女店員……。
何についてここに書くのが適当であろうか? 二人の主人公の愛について? 無理心中を図った女性の業について?
これは柄じゃないので、いつものでたらめ書評的に話を進めると……主人公亜紀の父親の告白部分が良い。「好きな女がおるんや」……男はいくつになっても美しい女性に弱いらしい。全体的に悲しいトーンのこの小説のなかで、数少ない心和むシーンである。
85点
いろんな内容がぎっしり詰まった、幕の内弁当みたいな小説。まず、往復書簡による文章(これがとても効果的に主人公二人の心情を吐露させている)。他には思い付くままに挙げると、無理心中、十数年後の再会、障害を持つ子供、モーツアルトの流れる喫茶店、スーパーの女店員……。
何についてここに書くのが適当であろうか? 二人の主人公の愛について? 無理心中を図った女性の業について?
これは柄じゃないので、いつものでたらめ書評的に話を進めると……主人公亜紀の父親の告白部分が良い。「好きな女がおるんや」……男はいくつになっても美しい女性に弱いらしい。全体的に悲しいトーンのこの小説のなかで、数少ない心和むシーンである。
85点