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よしなしごとども 書きつくるなり
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伊藤たかみ(文藝春秋社)

 敦は三十歳の誕生日に妻と離婚しようとしていた。一緒に自販機のルート配送をしている水城にその事実を打ち明けると、彼女は自身の離婚に絡めていろいろな話をするのだった……。

 これが芥川賞受賞作? というのが第一印象。冴えた表現はところどころあるが、逆に言うとそれだけ、な作品。
 文章も「?」だが、主人公もまたいただけない。女々しくて勝手で、これでは妻の知恵子がかわいそうだ。敦なんかと出会わなければ良かったのに。
 しかし、敦もまた知恵子と違うタイプの女性と結婚していたなら、普通に幸せになれたような気もする。二人は決定的に相性が悪く、互いが互いをダメ人間にする運命にあるようだ。
 もう一編の『貝からみる風景』のほうがましだった。主人公はスーパーの掲示板を読むことを楽しみにしているという。私もあれを読むのが好きだ。「人間の価値を下げてしまいそう」だと考える主人公に同意はできないが。
50点
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伊藤計劃(早川書房)

 近未来、人類は大暴動を経て「生府」が統治する新しい世界を創りあげた。病気はほぼ全滅し、人々は健康と安寧を手に入れた。そんななか、ある3人の少女が反旗を翻した。「私たちは死ななければならない。命が大事にされすぎているから」……。

 こういう世界観が好きな人にはたまらない小説なんだろうな、ということは想像がついた。htmlのようなタグのついた文。トァン、ミァハ、キアンという3人の名前。「自律状態」に「スタンドアロン」とルビをふる感覚。目指すところは何となく分かるが、私の好みではなかった。
 そんなこんなで、内容がどうとか主旨がどうとかいう以前に、嫌悪感が先だってしまってどうしようもなかった。
 こんな感想で本当に申し訳なく。
40点
糸井重里(東京糸井重里事務所)

 そのタイトルどおり、ネットでメールマガジンで投稿された「言いまつがい」を集めたのが本書。

 なんて面白い本なのだろう。内容ももちろんだが、装丁も面白い。表紙の紙はサイズが合ってなく、本のカドが一箇所だけ丸まっていて、活字も曲がっている。作り手の「悪ふざけ」っぷりに苦笑を誘われる。
 私のツボにはまりまくった作品をここに引用したいのはやまやまだが、それはルール違反なのだろう。なので、ぜひとも書店で本書を手に取り、25ページを読んでいただきたい。きっと笑いを堪えきれず、店員に不審の目で見られ、とどのつまり買わずにはいられなくなることでしょう。
90点
糸井重里(ぴあ)

 超有名サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のイベントとして行われた講演会で、4人の知識人が語った内容をまとめたのが本書。
 私は常々、誰にでも理解できそうな平易な言葉で、難しいことを語れる人こそ、本当に頭が良い人だと思っている。難しい言葉をこねくり回す人は、頭が良いフリをしているだけだとも思っている。
 その認識と、この本の内容は、見事に合致している。4人の、「知識の最先端」の人たちは、分かりやすく、面白く、難しいことを語っている。
 特に第四幕「日本の行方」が興味深かった。日本の歴史を紐解きながら、今後の日本の有りようを提案しているのだが「美しい国を目指そう」という案は、とても素晴らしいと思った。
80点
五木寛之(幻冬舎)

 私には合わない本だった。
 体調が悪い時すぐ病院に行くのが悪いことのように書かれていた。そこが最も納得できなかった。本が手元にないので(読んですぐ古本屋に売っぱらった。普通そんなことしないんだけど)表現が本文とずれてたらすみません。
 小説はそこそこ面白いと思えるのに、エッセイがこれほど合わないとは……。
10点
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