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この人はなぜ自分の話ばかりするのか

ジョーエレン・ディミトリアス(ソニーマガジンズ)

 この本の筆者は、陪審員を選定するとき、どの人を選んだらいいのかアドバイスするコンサルタントである。いわゆる「人を見る」プロ。そのせいか納得できる部分が多い。

 安物のティッシュを買う人は他人へのもてなしにお金を使わない人だとか、誰かの悪口を言う時ためらいがちに、さも自分は犠牲者なのよという口調でしゃべる人は、実は相手をコントロールして自分を助けてもらいたいだけだとか。
 読み進めていくうちに心に積もっていく澱がある。本当に親切でおもいやりにあふれる人間なんて、そうそういないという事実である。たぶんそれが現実、なのだろう。
55点
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パイの物語

ヤン・マーテル(竹書房)

 インド人のパイ・パテルは16歳。父親は動物園を経営していたが、あるときカナダに移住することを決心する。
 しかし、一家を乗せた船は太平洋上で沈没。救命ボートにはパイのほか、シマウマ、オランウータン、ハイエナ、ベンガルトラが同船した。そこから長い長い漂流が始まった……。

 227日間にも及ぶ漂流。そこにはトラとの息詰まる駆け引きあり、暴風雨あり、食糧難ありと、まったく読者を飽きさせない。特筆すべきはトラの描写であろう。しなやかで美しい生き物。その魅力を余すところなく描いている。
 ラストもひねりが効いていて素晴らしい。
 ただ残念なことに、漂流する前の「第一部」が退屈だった。ここがもう少し短ければ間違いなく100点だったのに。
95点

蝿の王

ウィリアム・ゴールディング(新潮社)

 無人島に不時着した飛行機。何十人かの少年が島に降り立った。
 最初は平穏を保っていた集団が、次第に秩序を失い始め……。

 ほら貝、豚の死骸、フェイスペインティングなどの事柄がシンボリックに描かれている。それらのものが意味を持つ・失う瞬間がストーリーに起伏を与えている。
 しかしながら、子供と言うのは残酷で利己的ではあるが、はたしてここまでのこと……理由の無い殺戮……をするだろうか。
 この疑問の答えは「ジャック」という少年にあるような気がした。煽動する者、権力を誇示する者が出現すると、子供と言うのは手もなく従ってしまうものなのかもしれない。
 げに恐ろしや子供たち、である。
60点

はなれわざ

クリスチアナ・ブランド(早川書房)

 イタリアの風光明媚な孤島にやってきた旅行者たち。バカンスを楽しむはずが、一行のなかのある女性が殺害されてしまい、全員に嫌疑が掛かる。ツアー客の一人だったコックリル警部は調査に乗り出すが……。

 ツアー客たちの描写がまず面白かった。魅力的な新進女流作家。陽気に場を盛り上げる男性デザイナー。片腕を失った失意の元ピアニスト、などなど。みな腹にいちもつありそうで、誰が犯人でも不思議ではないと思わされた。
 殺人のトリックに関しては賛否あるようだが、私はまんまと騙されたので個人的には「○」。
 ただ、犯人の描き方には疑問が残った。警部は「(犯人には)悪質の素地があったのです」と述べているが、そこまでの悪人だという描写が事件の前には無かった気がする。むしろ別な人物の悪人っぷりをしつこく描いていたのは、ミスリードにしてもズルイと思った。
80点

パニックの手

ジョナサン・キャロル(東京創元社)

 短編集。表題作もいいが『おやおや町』が面白かった。
 シルヴァー夫妻のところに、新しい掃除婦・ビーニィがやってきた。彼女は掃除の天才だった。地下室や車庫で、彼女は忘れ去られていたいろいろな物を見付けてきては、夫妻に聞くのだった。「これは?(どう処分しましょうか)」。
 初めは面白がっていた夫妻だが、ビーニィが「あるはずのない物」を差し出してきたとき、主人のスコットはある疑念を抱く……。
 ビーニィがその正体を明かしてからの展開が凄まじい。彼女はスコットに、彼の子供たちの「現実」を見せ付ける。見るに耐えないような現実を。スコットの絶望は察するに余りある。
 さらにラストで明かされる、驚愕の事実。「だから今、世界はこうなのか」と、思わず納得しそうになった。

 余談だが。
 この作品集、翻訳がどうも気に入らなかった。「……写ってた」「……冷めてった」といった「い」抜き言葉が目に付いて仕方がなかった。
80点

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