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マーチ博士の四人の息子

ブリジット・オベール(早川書房)

 医者であるマーチ博士には、四つ子の息子達がいた。とてもよく似た、美しい四人。でもその中の一人は殺人鬼だった。彼は殺人日記をつけていて、それをメイドの娘が見つけて盗み読みしてしまう。

 殺人者の日記とメイドの日記が交互に書かれているが、それが面白かった。残忍で狡猾な殺人者、饒舌で低レベルなメイド。この対比が効いている。ただ殺人者の正体は……ちょっと不満。手法として、ルール違反すれすれではないだろうか。
60点
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魔女が笑う夜

カーター・ディクスン(早川書房)

 英国の辺鄙な村に、後家と呼ばれる奇妙な岩があった。
 あるとき、村中の人々に中傷の手紙が届きだし、ついには自殺者まで出てしまう。手紙には「後家より」と署名がなされていたが、その正体は誰なのか。

 バカミスの原点との評もあるというこの作品。読んで納得、である。
 ストーリーにはひねりがなく、セリフには無駄なひねりが多すぎで、読みづらいことこの上ない。
 また、犯人が自らの犯行について口を滑らすシーンがあるのだが、これは誰が読んでもそれと気付くだろう。
30点

貧しき人びと

フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー(新潮社)

 役所に30年あまりも勤める、無学で貧しい男、マカール・ジェーヴシキン。病弱な薄幸の女、ワーレンカ。
 二人の往復書簡によってストーリーが進んでゆく。ドストエフスキーの処女作。

 貧しいにもほどがある、というほどの貧しさ。マカールもワーレンカも、お互いの窮状を察しては、なけなしのお金を送りあう。だが次々と問題が起こり、不幸が連鎖し、周囲の人々も困窮してゆく。読んでいて胸が苦しくなった。
 マカールの書いた「貧乏人というものはぼろ屑にも劣る」という一節が、この物語のすべてを語っているかのようだ。
 幾多の屈辱に耐え、消耗していく人々は、まるで「生きる資格もない」と神に見捨てられたかのようである。
50点

ミニ・ミステリ傑作選

エラリー・クイーン編(東京創元社)

 67編もの短編が収録されている。
 エラリー・クイーンによる、ぞくぞくするような粋な序文。
 最初の作品『探偵業の起源』に書かれている、アダムとイヴによる笑える事の始まり。
 この二点を読んだ時点で、本作品集の出来の良さを確信した。もちろん期待は裏切られることはなかった。

 特に面白かった二編を紹介しよう。
 ある牧師の死後、書店から請求書が届く。牧師は生前、そこでいかがわしい本を買ったというのだが……『牧師の汚名』。
 独り暮らしの老人が自殺しようとして失敗した。事件を担当した新米警官は、二度とこんなことをしないようにと約束させて老人を釈放するが……『ある老人の死』。

 (今となっては)使い古されたトリックも多いが、それでも楽しんで読むことができた。
85点

無伴奏ソナタ

オースン・スコット・カード(早川書房)

 11の作品は、本当に同じ作家が書いたのかと疑いたくなるほど、物語の舞台も雰囲気も違った作品で、SFのごった煮といった風情。

 『呼吸の問題』が良かった。
 デイルはあるとき、息子と妻の息遣いがぴったり一致していることに気付く。その直後、二人は事故死する。次は飛行機事故。空港の待合所で待っている人々、その呼吸がそろっていることにデイルは狼狽する……。

 私もかねがね死の「きっかけ」について考えていた。神が決めた一定のルールがあって、偶然その行為をした者が急死することになっているのでは? と。呼吸が合ったらアウトだなんて、うまい設定を考えたものだ。
 他に便器から恐ろしい赤ん坊が出てくる『四階共同便所の怨霊』も、楳図かずおっぽくて面白かった。
85点

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