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奇跡も語る者がいなければ

ジョン・マグレガー(新潮社)

 場所はイングランド北部の、あるストーリー。そこには様々な住人が暮らしていた。双子の兄弟。ドライアイの青年。22番地には眼鏡の女の子。夏の終わりの彼らの一日がゆっくりと語られてゆく。
 そしてもう一つの物語は、眼鏡の女の子の三年後について。彼女は予定外の妊娠をして困惑していた……。

 独特の文体に、まず驚いた。ひとつの文に何度も出てくる一人称。詩的な言い回し(体言止め、聞いたこともない擬音など)。それらには最後まで慣れることができなかった。
 読みにくさも手伝ってか、ひどく退屈な話に思えた。ラスト近く、二つの物語が交錯して少し盛り上がったが、我慢して読んだ結果がこれなのかと、唖然ともした。
 無名の人々に光を当てるという小説は、短編ならまだしも、こう長くては飽きてしまう。
50点
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極北で

ジョージーナ・ハーディング(新潮社)

 1616年の北極海。一隻の捕鯨船が帰国の途に着こうとしていた。たった一人、極北の地に一年間留まることを宣言した男、トマス・ケイヴを残して。無謀ともいえる賭けに乗った彼の、地獄のような一年が始まる……。

 ひどい寒さのほかに、どんな困難があるのだろうか? と思いながら読み進めると、ほどなくして彼は幻影に苛まれるようになった。いないはずの愛妻が現れる。それとともに、彼の悲しい過去も明らかとなる。
 過去から逃れたくて、ケイヴは自暴自棄になっていたのだろうか? いや、彼はつらい過去を初めから終いまで思い返し、咀嚼して、乗り越えようとしたのであろう。日誌をつけ、狩りが出来る日は出掛けて行き、甘美な罠(=幻影)に打ち勝とうと必死に努力するケイヴ。その精神力には畏怖の念さえ抱いた。
80点

木を植えた人

ジャン・ジオノ(こぐま社)

 第一次大戦の直前、「私」は、プロヴァンス地方の高地で、とある羊飼いと出会った。
 家族もなく、一人で暮らす彼は、ドングリを荒地に植えていた。三年で十万個のドングリを植えたという彼は、その後もずっとそれをし続けた……。

 たった一人の、何の力も持たない人間が成し遂げたことの大きさに、心を打たれた。文中にある「(羊飼いの)倦まずたゆまず与えつづける美しい行為」という表現がとても良いと思った。彼の無私な精神を、端的に言い表している。
 難点を一つ挙げるなら、この本の体裁であろうか。話のボリュームは小冊子サイズなのに、ハードカバー、しかもこの値段はいかがなものか。
70点

クライム・マシン

ジャック・リッチー(晶文社)

 17の短編が収められているが『歳はいくつだ』がよかった。
 街にはびこる冷淡で無礼な人々。彼らはある男にこう尋ねられる。「歳はいくつだ?」。
 「罪」に対する「罰」が重過ぎる。なんて固いことは言いっこなし、主人公の懲悪っぷりには胸がすく思いだった。だいたいこういう失礼な輩は、今までも、そしてこれからも罪を重ねていくこと必至、だったら早めに成敗したほうが良い。

 他に、タイムマシンで殺人の現場を見られた男が、そのタイムマシンを手に入れようとするが……表題作『クライム・マシン』や、刑務所に入るために殺人を犯した男の末路を描いた『殺人哲学者』も面白かった。
85点

クリスチィ短編全集(2)

アガサ・クリスチィ(東京創元社)

 世にクリスティーの作品数々あれど、私が読んだ彼女の作品は何十冊もあれど、私のイチオシはこれに収められている「うぐいす荘」である。マイナーな目立たない短編ではあるが、クライマックスでの私の心臓バクバク度はこれが一番だった。
 自分の夫が殺人鬼だと気付いてしまった妻、その瞬間外出先から戻ってきた夫はシャベルを手にしていた。妻を殺害した後に埋める穴を掘るためのシャベルを。絶体絶命の妻がとった行動とは。

 追伸。この小説、他の出版社では「ナイチンゲール荘」という名前になっているようです。
100点

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