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ラスト・チャイルド

ジョン・ハート(早川書房)

 十三歳の少年ジョニー。彼の双子の妹アリッサが誘拐されてしまう。それから一年、ジョニーは妹を捜し求めて、危険な調査……前科者を見張る……を続けるのだった。

 妹は行方知れず、父親も失踪、母親は街の権力者によって薬漬けにされられ、とあまりに過酷な境遇にいるジョニー。彼が大人に対して頑なな態度をとるのも無理は無いだろう。
 それでも誘拐事件の担当刑事・ハントは何くれとなく彼の力になろうとする。狂気と暴力が横行する物語のなかにあって、ハントの優しさが際立つ。
 また、服役囚だったフリーマントルは、そのフランケンシュタインのような外見に似合わない純粋かつ素直な心で、ストーリーに潤いを与えてくれた。
 対して悪の権化はジョニーの母親を手込めにし、金に物を言わせてやりたい放題のホロウェイであろう。富裕層の人格障害者というのは、本当に始末が悪い。
90点
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ラッキーマン

マイケル・J・フォックス(ソフトバンク パブリッシング)

 パーキンソン病を患った俳優、マイケル・J・フォックスの自伝。
 彼が自らの病気のことをカミングアウトしたことは知っていたが、そこにたどり着くまでの苦悩は、想像を絶するものがあった。アルコールに逃げたり、家族にあたったり、引きこもったり。
 トップスターだった彼の絶望感は、読んでいるほうも苦しくなるほどだ。
 だが混迷の時期を乗り越え、病魔と闘う意志を固めてからの彼は、スクリーンの印象そのままの、ユーモアがあってひたむきな彼であった。

 それから「Back To The Future」の役を射止めた時のエピソードなど、私のミーハーな心を満たしてくれる部分もあったりして、その意味でも楽しめた。
 ひとつだけ難を挙げるとすれば、二重否定などの翻訳モノに特有の文章が少し読みづらかった。

 これはいわゆる「タレント本」の枠を超えた、画期的な作品だと思う。
85点

リプリー

パトリシア・ハイスミス(角川書店)

 映画「太陽がいっぱい」の原作。私も観ました、昔。主演はアラン・ドロンでした。

 でも映画の中のアラン・ドロン、この本の主人公みたいな性格だったか……読んでいて苛々するほど女々しい男。「……と言いかけたがやめた」とか「彼はうらめしそうにボブをじっとみつめた」とか、絵に描いたような卑屈人間。
 ストーリーは簡単に言うと、主人公のリプリーが大金持ちのディッキーを殺して、彼になりすますという話。
 殺人が起きるまでは退屈だった。が、事件後はリプリーが持ち前の小心者根性を剥き出しにして、それが皮肉にも楽しめた。
70点

リンさんの小さな子

フィリップ・クローデル(みすず書房)

 戦争によってすべてを焼き尽くされ、故郷を追われたリンさん。難民となった彼は、孫娘である赤ちゃんと一緒にとある港町へと連れて来られた。
 その街で、彼はバルクという気の良い男と出会う。二人の間には次第に友情のようなものが芽生えるのだった。

 私の拙い言葉では、この本の素晴らしさを表現できない、と思わせるほど良い本だった。
 悲しみに打ちひしがれ強ばったリンさんの心が、バルクさんの優しさでほどけてゆく。言葉も通じない二人だが、温かくゆっくりと心を通わせあう。その過程が、読むほどに味わい深い。
 終盤の、突然の二人の別れ、そしてリンさんの受難がまた読ませる。お願いだから残酷なラストにしないでくれと、祈るような気持ちで一気に読んだ。そしてその祈りは……これ以上はネタバレなので自粛。

 リンさんの故郷では、死ぬ間際にいくべき泉があるという。その水を飲めば、辛い記憶、悲しい記憶は消され、楽しかった思い出だけが残るのだ。
 バルクさんが見たというそんな夢の話も、とても心に響いた。
95点

朗読者

ベルンハルト・シュリンク(新潮社)

 ハンナは無実の罪を着せられて刑務所行きになる。彼女がひた隠しにした事実は、自分が文盲であるということだった。

 彼女の羞恥心や価値観には驚かされた。すべてを失ってまで隠したい事実が文盲、現代の日本では彼女の心中を想像することさえ難しい。
 そして三十過ぎの彼女を支える十五歳のミヒャエル。何年も彼女のもとに通い、自分が本を朗読したテープを届ける。私は彼の行動には過度の偏執を感じてしまった。めくるめくような性を教えてくれた彼女に夢中になる過程は分かるが、その気持ちがずっと持続するというところが理解できなかった。
 でもショッキングな設定の割には、静かで地に足がついた読みやすい小説ではある。
80点

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