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よしなしごとども 書きつくるなり
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吉野源三郎(岩波書店)

 中学一年生のコペル君の体験をとおして、人生いかに生きるべきか、モラルとは? 社会認識とは? 等々を問う作品。
 こういう本を良書というのだろう。分かりやすい、面白い、飽きさせない、そして(陳腐な言い方だが)為になる。

 誰もが中学生のときに体験するようなエピソードがたくさん出てくる。
 たとえば友人がリンチを受けているのを傍観してしまうシーン。コペル君の後悔が痛いほど伝わってくる。
 そこで彼の叔父は言うのだ、「どんなにつらいことでも、自分のしたことから生じた結果なら、男らしく耐え忍ぶ覚悟をしなくっちゃいけないんだよ」。責任転嫁ばかりする人間が増えている今、叔父さんの言葉が重く響く。

 それから、貧しい暮らしをしている友人・浦川君について、叔父さんは言う。「君が、浦川君のうちの貧乏だということに対して、微塵も侮る心持をもっていないいうことは、僕にはどんなにうれしいか知れない」。コペル君はたまたま恵まれた環境にいるが、浦川君のように「生産する人々」がいるからこそ、社会は成り立っている。彼らを敬いこそすれ、決して見下してはいけないと叔父さんは繰り返す。

 まだまだ紹介したい良い話があるのだが、きりがないのでこのへんで。とにかくこの題名でもって敬遠することなく……小難しい哲学書かと思い、私は手に取るまでに時間が掛かった……学生の方にも大人にも読んでいただきたい一冊である。
95点
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